【読書メモ】幼児教育の経済学(ヘックマン著 東洋経済新報社)

わかったブログでかん吉さんが紹介されていたので、5歳の息子を持つ親として読んでみました。
先にお断りしておくと、本書は個々の家庭における幼児教育の方法についての書籍ではなく、ノーベル経済学賞受賞者である経済学者が、アメリカでの研究結果を基にして、教育を「投資」と考えた場合において、国家や地方自治体単位で未就学児に対して行う幼児教育がリターンが大きくかつ公平なものであると唱えた論文です。
僕自身、少しは自分の子育てに関するヒントでもあるのかな、と思って読んだのですがそうした意味では期待に応えてくれる本ではありませんでした。とはいえ、6歳までの幼児期に行う教育の重要性が様々な裏づけをもって書かれていますので、手法は示されていなくても、事実として知っておくことは有意義でした。

本書がユニークだと思うところは、その構成です。まず、自身の論文があり、その後に2〜3ページ程度で10名の専門家からのコメントが続き、その後に再び著者のコメントに対する反論があるというものです。専門家のコメントも、総論では著者の意見に賛成しているものが多いですが、それぞれの専門分野に関わる各論部分ではかなり辛辣に著者の研究に欠けている部分や効果に対する疑問などが挙げられています。あえて、こうした「アンチ」を掲載するという手法は、著者の自信を感じるとともにアメリカ的なフェアさなのかなと思いました。

幼児教育の重要性

幼児教育の重要性は、ネグレクトされて育った子どもの脳に見られる発達異常の事例が写真つきで紹介されていましたが、脳科学的に証明されていることで、幼児期に子どもに話しかけることが将来にわたって大きな影響を与えることは間違いないことです。著者の研究によるとその影響は、IQや学校でのテスト結果で示される認知的なことよりも忍耐や社会性といった非認知的な能力に与える影響が大きく、まさにそうした能力は、人間が一人では生きていけない以上、実際に社会に出てから評価される部分でしょう。

非認知的な能力は数値的な評価が難しいため、数十年間にわたって追跡調査を行い、対象グループの年収、労働状況、逮捕歴などで効果の有無を測定しています。早くから勉強を始めれば学力がつくのはトータルの学習時間も増えことになるので当たり前の結論ですが、幼児期から教育をすることで「勉強ができる子になる」こと以上に「社会性のある子になる」効果があるというのが、本書で得たいちばんの気づきでした。

家庭への教育介入

本書では「介入」という表現が何度も出てきます。貧困やシングルマザーだったりと保護者だけでは十分な幼児教育ができない家庭に対して、行政が教師の家庭訪問や子どもに毎日授業を受けさせるなどの施策を行うことで、幼児教育の底上げを図るわけですが、「介入」という言葉には、サポートをするというレベルではなく、強制力をもって行うというニュアンスを感じます。それくらいの力でやらないと実効性が期待できないのでしょうが、ハードルは高そうです。。

アメリカにおいて教育環境に関する格差が拡大していることが示されていますが、貧困家庭に育った子どもが高等教育を受けられない、十代で妊娠するといった貧困スパイラルを産んでしまうことは、アメリカだけではなく日本でも深刻な問題となってます。このあたり、西原理恵子さんの「この世でいちばん大事なカネの話」では、そうした環境について、西原さんご自身の体験からリアルに書かれているのであわせて読んでみるとよいかもしれません。

まとめ

子どもの教育を早め早めにすることが経済的に効率がよいという事実を子どもが小学校に入る前に知ることができたのが大きな収穫です。行うべき幼児教育の内容は本書では示されていませんが、とにかく子どもと接する時間、子どもに話しかかえる時間を多くとることが、大事なのではないでしょうか。

自分自身が楽しみながら子どもと過ごす時間を確保することで、後々、塾に行くための費用をかけたり、志望する公立の学校に行けず私立に通わせるといった事態を避けられるとしたら、投資効率がよいどころか、投資ゼロでリターンが得られるスゴイことですね。

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