成年後見制度説明会で学んだこと

近くの図書館で成年後見制度について司法書士による説明会があったので参加してみました。(財産はありませんが…)両親もけっこうな年齢になり、高齢者を狙った怪しいリフォームなどの営業を受けているようなので詐欺に引っかかる前に防衛策を取っておいたほうがいいかなという軽い動機で行ってみました。
僕は、一応、法学部を出ているので後見人という概念自体は理解していたのですが、実際にお話をうかがってみると、そうそう簡単に利用できるものでもないなと実感しました。僕が当初思っていたイメージとそのギャップについて書いてみました。

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成年後見制度とは

認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。

法務省ウェブサイトより
後見制度には法定後見、任意後見の2種類がある、判断能力の水準によって「後見」以外に「保佐」「補助」があるなど、説明会で伺ったことを細かく書けばきりがないのですが、ここでは自分の持っていたイメージと違いにフォーカスして書いていきます。

ポイント1 申立人が後見人になるとは限らない

「自分が後見人をします」という意味で申立をするものだとばかり思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。後見人は家庭裁判所が選任するので、申立人以外の人が選任されることも多くあります。

ポイント2 後見人に親族が選任される割合は3割しかない

平成27年の成年後見申立件数は約35,000件とほぼ1日100件の申立が行われていますが、その中で子、配偶者などの親族が後見人として選任されたのは約30%で、残り70%は司法書士や弁護士などの専門家が選任されています。
最高裁判所が毎年出している「成年後見制度の概況」にデータがまとめられていますが、後見申立の動機としては「預貯金の解約」が多数を占めており、(分かりやすく言うと)認知症になった親の財産を自分のものにしようと考える子が相当数いると推定されます。この数年の傾向として財産管理を行う後見人は、親族ではなく第三者にする方がトラブルが少なく、本人の為であると裁判所は考えているようです。

ポイント3 裁判所が後見開始の決定をしたら取り下げはできない

これも驚きだったのですが、申立をしたら後見人が自分の意に沿うものでなかった場合でも申立の取消はできず、後見が開始されます。一度、後見が開始されたら、本人の死亡または能力の回復以外の要件では後見を終了させることはできないので、申立が認めれた場合、自分の意図した形式にならなくても亡くなるまで続くと考えておかなければなりません。

ポイント4 後見人には報酬を支払わなければならない

後見人が司法書士などの専門家であれば報酬の発生は当たり前のようですが、報酬の金額は財産などに応じて裁判所が決定するもので、後見人が親族であっても本人の財産から所定の金額を支払うことになります。
2013年に裁判所が出している「成年後見人等の報酬額のめやす」によると、報酬は通常月額2万円で、管理財産額が1,000万円〜5,000万円では月額3〜4万円、5,000万円超の場合5〜6万円程度とされています。

ポイント5 後見人は細かな財産管理を行わなければならない

後見人になると、財産に関わる全ての法律行為の代理権が認められます。つまり、本人の代わりに後見人が借金もできるし、本人の固定資産を処分することもできます。こうした濫用を防ぐために、後見人は、本人の財産に関しかなり細かな管理をして裁判所に報告する義務を負います(専門家は1円単位で報告を作成するそうです)。そうした負荷を補うものとして報酬が支払われるわけです。具体的には、後見開始時にまず財産目録を提出し、その後は1年に1回家庭裁判所へ「後見事務報告書」や預金通帳のコピーなどを提出しなければなりません。

まとめ

僕がイメージしていたのは、自分または妹が父の後見申立をしておけば、認められたら悪徳商法に引っかかった場合でも取消権があるから安心だろうというものでしたが、さすがに人間一人の法的能力を奪うという行為に対してはかなり厳しい制限がかけられていました。
実際に、話を伺ってみると、よほどの財産がなければ予防的に後見制度を利用することはメリットよりも色々な面で負荷が高いように思いました。

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