2011イタリア旅行(Day8)

昨日はかなり歩きまわったが、今日はパレルモ市内観光なので朝ものんびり。宿の朝食をしっかりいただいて、9時すぎに駅前へ行く。まずはバスでマッシモ劇場へ、10時開館らしく閉ざされた門の前に観光客が座っている。劇場をぐるりと一巡り。さすがに大きい。ローマのオペラ座なんか問題外というレベルだ。このシアター、オープン当初はヨーロッパでもパリのオペラ座に次ぐ大劇場だったとか。窓の木枠や細かいところはかなりいたんでいるが、現役の劇場だけあって風格は残っている。


10時になって門が開いたので中へ。新年の公演は1月20日頃からだが、館内見学の観光客やチケット予約にきた人達でそれなりに活気がある。正面階段は「ゴッドファーザー PARTⅢ」のクライマックスシーンで使われたことで有名。きっと今までにも多くの観光客がゴッドファーザーのテーマをここで口ずさんだに違いない。

映画で見ると、この階段ももっと白くて広く感じるし、周囲のお店や観光馬車なんかまったく入らないわけだから、カメラワークって偉大だな、と違った意味で感動。

劇場ロビーまでは(無銭でも)普通に入れて、次回作の案内など見られる。天井がはるかに高い。しかしながら壁も天井も、上のほうは塗装がはげたり雨漏りのあとがかなり広範囲に渡っていて、激しく傷んでいる。そのうち大規模な修復が入るんじゃないかと思うが、上演中ではないとはいえ、普段のロビーはきらびやかさとは程遠いやや悲しい感じ印象だった。


劇場見学の後は、向かいにあるレストランのテーブルがならんでいる細い道へ入ってみる。ここはどうやらアーティストの小さなショップがならぶアート通りのようなところらしく、普通のお土産物とはちょっと違う素敵なお店が並ぶ。アクセサリーや帽子、鞄や小物など、どこも職人が作業している様子が眺められるのが楽しい。

ひゅっと黒猫が出てきたお店はシニョーレ2人でやっている木工と粘土細工の工芸屋で、なかなか作品のクオリティも高いのでなので入ってみる。おじさんはミニ日本語辞典なんか持っていて、黒猫をさして「ネコ、ネコ、ジュリエッタ」なんて教えてくれる。

この店で扱っている作品もなかなか素敵で、お土産に寄木のパネルを購入。聖家族の人形なんかもすごくかわいいんだけど繊細で壊れそうなのであきらめる。よくできたミニチュアの部屋やバイクなんかがたくさん並んでいるものの、多くは非売品。どうも、コンセプトはおじさんたちの趣味のお店らしい、ミニチュアの野菜なんかにまじってカンノーロなんかもあるのがシチリアらしく微笑ましい。

そのまま通りをいくと、「Opera dei pupi」という人形劇のシアターを発見。どうやら今日18時30分から公演があるようなことが書いてある。お向かいに何軒か並んでいる人形工房のお姉さんに聞いてみると、たしかに今夜だというので、見に来ようということに。

そのままてくてくと歩いて、サンタ・チータ教会へ。ここはいくつかの教会との共通券を買って入る仕組み。サンタ・チータ教会には中庭のようなスペースがあってなかなか素敵。聖堂の脇には茶、黄、黒、白と色とりどりの大理石の彫刻で埋め尽くされた見事な礼拝堂がある。うーん、この大理石をふんだんに使えるのも、石に事欠かなかったからなんだろう。こんなレベルの彫刻がある教会はまず日本では見られない。ひたすら芸術レベルの高さに感心してしまう。




階段を上がって2階にいくと、ここに入場券もぎりのお姉さんがいて、至宝の空間へ通じる。18世紀に活躍したジャコモ・セルポッタというシチリアが誇る漆喰彫刻の名匠の作品に囲まれた礼拝堂。真っ白な彫刻はどれも本当に生き生きしていて、所々に使われている金が映える。「レパントの海戦」を描いたレリーフがガイドブックにも紹介されていたけれど、壁から浮き出たような天使像の数々が本当にかわいい。セルポッタがよっぽど子ども好きだったんじゃないかなと思うくらい愛らしいしぐさを完璧に描写、塑像している。いたずらをしていたり、興味津々でこちらをのぞきこんでいたり。椅子に腰掛けて時の経つのを忘れて隅々まで眺めてしまう。


セルポッタの作品をすっかり堪能した後、共通券で巡れるロザリオ・イン・ドメニコ教会へ。こちらにもセルポッタの作品があった。いったいこの人は生涯にどれほどの作品を残したのだろう。よくよく見れば指先など欠損している部分もあるが、壁面に飾られた絵画や天井のフレスコ画と比べると保存状態は素晴らしく良い。こういうところ、石や彫刻は強いなぁ、と思う。




セルポッタの作品群をじっくり眺めているうちに、いつのまにか13時をすぎてしまい、もう一つ行こうと思っていた教会が閉まっていた。シチリアでは、教会は常に開いているわけではなく、朝と夕方しか開かないのが普通のようで、ちょっとのぞいてみたい教会が沢山あるのに残念。さらに、教会だけでなく店(特に個人商店)の大半もお昼から3時、4時くらいまでは閉まっている所が多く、ちょっと戸惑う。


教会巡りは諦めて、ブッチリアの市場をのぞく。もう午後だから魚屋もあまりやってはいないが、ウニ売りを発見。スプーンで身をすくってエスプレッソを持ち帰る時のようなプラスチックのカップに入れて売っている。こっそり立ち聞きしたところ15ユーロとか聞こえたので、価格は日本並かも…
ウニをどうやって料理しているのか、買いにきていたお母さんにきいてみると、パスタのソースにしたりパンと食べたりするらしい。パスタソースは納得。パンは…どんなもんなんだろう。やはりほかほかご飯と食べるのが最高!だと思うのだが…。




ウニ屋さんの前には何やらずっと話し込んでいるお父さんの小さな屋台があり、鍋から湯気が上がっている。何だろうとのぞかせてもらうとホルモン。これをバンズにはさんで食べる。へ?と思っているうちにお父さんはさっさと一つ用意しようとする。2ユーロだというので1つ食べてみることに。味付けは多分塩コショウだけで火を通したタンかレバーみたいなホルモン(脾臓らしい)に塩とレモンをしぼるだけのシンプルさ。でもこれが美味い。後で調べると「Milza」(ミルツァ)というシチリア名物の1つらしい。

ほかほか「Milza」を堪能して、なんとなく先日も来たサン・フランチェスコ・ダッシジ教会へ。この前にあるStefanoオススメの有名フォカッチェリアでお昼ご飯にすることにした。行ってみると、今日はアムネスティのイベントデーらしく、教会前の広場に屋台を広げて営業している。8ユーロでクーポン4枚を買うことができて、食べたいものと交換するしくみ。一般オフィスワーカー含め繁盛している。ハムとモツァレラチーズのアランチーナ、赤ワイン、再びミルツァ(笑)、それに連れはまたまたカンノーロを買った。ここのミルツァはチーズを2種類はさんでもらえた。カンノーロはオレンジピール付き♪


店内の席が空いたので、立ち食いから移動し、落ち着いていただく。イタリアは飯がウマイというが、ボリュームを考えるとレストランより軽食店のほうが日本人向きなのではないかと思う。

昼食のあとは、てくてくと海側まで散歩。道路沿いは交通量も多くて歩きにくいので、工事中の遊歩道の方へ入れるかなと思ったら、現場のおじさんがわざわざロープを下げて通してくれた。このへん日本なら逆にロープを指して追い返されそうなものだが…(笑)。
パレルモのヨットハーバーにはぎっしりヨットが並んでいて、たまに「売ります」という張り紙がしてある。いくらくらいなんだろうか?この一週間は本当に暖かく、昨日・今日は日中20度。早速ヨットを出す人もちらほら見受けられる。

ハーバーの先、フェリーチェ門の前は公園になっていて、ここでベンチに腰掛けしばらくぼへーっと海を眺める。まるで山下公園(笑)。ギリシャ行のフェリーが出港するのを見送りながら日なたぼっこ。これくらいの陽気は最高だ。


よく見るとやはり街と港の上はスモッグが広がっている。空が灰色と空色のツートンカラーに分かれているのも横浜とおなじ。トラーパニの港では感じなかったので、やはりパレルモは都会なのだなあと再認識。

のんびりしたあとは、カテドラーレ、ヌオヴァ門、ノルマン宮を目指してまた街中へ。休憩後はひたすらビットーリオ・エマヌエーレ二世通りを西へ歩きく。カテドラーレは前に広がる広場も広くて観光客も多い。そして観光馬車や土産物屋さんも並んでいる。かわいい食品雑貨店でお土産用のピスタチオクリームを購入。


カテドラーレ(大聖堂)の両端には、それ程高くはないものの、ビッグベンのような塔が建っている。片方は時計、もう片方は鐘楼らしい。大聖堂の中には王家の墓廟や宝物を見る有料のコースもあったようだが、それらはもう終了。午後は他の教会がほとんどしまっているのだから中に入れただけでもラッキーか。広くてひんやりした堂内には聖人像が立ち並ぶ。




一休みをかねた大聖堂見学を終え、三角屋根に青と黄色のタイルか瓦のモザイクが鮮やかなヌオヴァ門をくぐる。この門は16世紀のものらしいが、カテドラーレからくぐった反対側にはターバンに口ひげ、腕を交差させたアラブ風の男性像が四体、門をくぐる人々に睨みをきかせる。が、なんとなくこう、腕を組んでいるというよりは胸を隠しているみたいで表情もユーモラスに見えるのがご愛嬌。勝手に「いや~ん門」と名付ける(笑)。


ノルマン宮に着いたのはすでに16時。閉館まで1時間半くらいらしいが間に合った。ここはパレルモ3大モザイクスポットの1つ、「パラティーナ礼拝堂」が有名で、「地球の歩き方」曰くパレルモ一番の見所だとか。チケットオフィスもしっかりしていて、入場料金は10ユーロと高い。

中庭の階段を上り、2階のパラティーナ礼拝堂へ。堂内に入る前、外側の壁にすでに大きなモザイクが描かれている。屋外とはいえフレスコと違ってほとんど剥落や傷みがないのがモザイクのよいところだ。


見上げる姿勢のまま堂内へ入ると、思わず溜息のでるゴージャスなモザイクづくし。金色の地に色鮮やかなタイルでびっしりと聖書の物語が描かれている。天井はアラブ風幾何学模様というのか、蜂の巣のように鮮やかに彩られた六角形の立体になっていてこれがまた素晴らしい。木の梁もすべて模様が描かれている。








下を見ると床は床でまたモザイクがすばらしい。細かいタイルがつくる模様はどれも違うように見えていったい何パターンくらいの模様があるのか見当もつかない。床や柱のモザイクだけでも十分1冊の写真集になるだろう。


溜息とともにひたすら首を上へ下へと巡らして、パラティーナ礼拝堂を出る。正直、もうお腹一杯という感じだだ、宮殿の3階も見学コースなので行ってみる。ここは現在も州議会として使用されているということで、ガイドツアーでしか見学できない。ツアーが出発するまでは外の階段で待たないといけないのが冬はつらい。

ガイドツアーはイタリア語のみなので正直なところよくわからないが、代々の主たちが使ってきた部屋を巡る。モザイクでどこかユーモラスな表情の動物が描かれた部屋や、四角錐の形の屋根を持つ風の間が素敵。写真を撮ったら、その時だけ「No Photo!」と英語で怒られた。撮影禁止のカンバンは見当たらなかったんだけど…

3階はさほど広くはなく、ツアーも20分くらいで終了。その後、1階の奥にあったホールへ。ここはよくわからないけれどギャラリーになっていてコンテンポラリー・アーティストの作品展を開催中。実は、ここも共通券に含まれてたのだが、気づかないで帰ってしまうところだった(苦笑)。

ギャラリーから地下に降りる階段があったので行ってみると、地下は遺跡が保存されていて、宮殿が建つ以前のカルタゴ要塞だった時代の遺構が見られる。見落とさずに寄れてよかった。

宮殿見学を終えるともう5時半近く。人形劇場にそろそろ向かわなくては。メインロードの歩行者天国を歩いてマッシモ劇場まで戻る。クリスマスのバーゲンシーズンなので、どの店も「SALIDA」のステッカーが貼ってあり、買物客で賑わっている。マッシモ劇場に着くと、正面柱の電飾が点いていて違った雰囲気を見せている。


人形劇場にいくともう開場していて、チケット(8ユーロ)を購入して中へ。中は細い縦長の小さな一間で、客席も100人くらい?会場では、係のお姉さんが子どもたちを上手に前の席に案内している。壁には演目の各場面を描いた幕がかけられているほか、海外の団体からの表彰状や仮面がかざられている。その中に日本のひょっとこやお多福、鬼に狐のお面も。西武百貨店から功績をたたえる表彰状が贈られていた。日本公演があったんだろう。

開演の時間になると、いつしかほぼ満席に。早めに来てよかった。お客さんの大半はイタリアの観光客みたい。子どもを案内していたお姉さんがオルガンか何かを回して大音量のオルゴールのような音楽を担当する。照明が落ちて部屋の正面の舞台前で、まずは前座らしい親方風の人物と丁稚のような人物が笑いをとりながら導入をする。なにげに葉巻から煙が出る凝った仕掛けもある。


演目は三人の騎士、リナルド、オルランド、ラダマンテ?らが活躍する騎士物語で、アラブ風の敵や巨人と戦いあり、アンジェリカというお姫様との恋ありと、場面も次々と転換し、アクションシーンもかなり派手(調べたところ、どうやらボイアルド作「恋するオルランド」「狂えるオルランド」という二つの物語を下地にした騎士物語らしい)。鎧をつけた騎士たちが戦うとガチャガチャと激しくぶつかり合う音が響く。けっこう激しくぶつけ合っているので、修理が欠かせないだろうなあ。また歌舞伎と同様に、「ドドンドンドン」と拍子木を打ち鳴らすような足音が小気味良い。

敵をばっさりやる場面は人形の仕掛けで真っ二つに顔や胴が割れちゃったり首が飛んだり、と子供に見せるものとしてはちょっと刺激的すぎるのでは…大人の僕らですら「ゲッ」っとなった。まぁ、この過激さも売りなんだろう。

約一時間で、騎士たちの勝利と成功をもって終演。最後は人形がお客さんにお礼を述べて物語はおしまい。拍手が響くとそれまで舞台に隠れて人形を動かしていた操り手の人達も小さな舞台に姿を表して手を振ってくれる。脇役を入れたら全部で30体くらい登場したように思うけれど、動かしていたのは3人だけらしい。どうやってんだろ?

チケット売場のお姉さんや子どもの案内兼音楽担当のお姉さんをいれても本当に少ない人数でやっているようだ。話の内容まではよくわからなかったが、十分楽しめた。オペラ・ディ・プーピ、シチリアに来たらぜひ!

結局、また宿までてくてくと歩き、夕飯はまた昨日と同じピッツェリアで、トマトにナス、粗挽きのスパイシーなソーセージ「サルシッチャ」に、モッツァレラをタップリいれたその名も「シチリア」という名前のピザを焼いてもらう。店かなりは繁盛していて次々に注文の電話が入り、頃合いを見計らって引き取りに来る人が絶えない。ファミリーサイズはノーマルサイズの二倍くらいあるのだが、座布団みたいな大きさの箱に入れて、みんな持ち帰ってる。近所の人達なんだろう。

しばらく待って、焼きたて熱々を部屋に持ち帰って頂きまーす。ピザは直径30センチサイズで高くても5ユーロなんだから、羨ましい。日本で食べる気が完全に失せるな。


本日の1曲 THE BEATLES「Things We Said Today」

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