【読書メモ】エンジニアとしての生き方(中島聡著 インプレスジャパン刊)

シアトルに住む著者が日本の若者(特にエンジニア)に対して贈るメッセージ。マイクロソフト日本法人の立ち上げ後、シアトルの本社に異動し、ビルゲイツの下でウィンドウズ95やインターネットエクスプローラーの開発に携わった著者のグローバルな視点にはうなずくところが多い。

僕自身は、既に若者でもなくwエンジニアでもないのだが、現在の「逃げ切りメンタリティ」経営者、雇用規制によって生まれた「終身雇用が保証された正社員」と「使い捨ての派遣社員」の二重構造が日本企業の病巣という指摘は、そのとおりだと思う。もっとも、今は正社員の雇用保証もかなり怪しくなっているが、待遇に大きな格差があるのは周知のとおり。

そんな日本企業に若い人たちが一生を捧げるつもりで働かないのは当然である。だからこそ、グローバルな人材市場で、ライバルは中国やインドのエリートであることを意識しつつ、自分自身の人材としての価値を高めていくために何をすべきかということを考え、そして行動しろというのが本書の肝。

なるほどと同意するところの多い本なのだが、特に「我が意を得たり!」と思ったのが

  • 保身のためにリスクを避けた結果「機能の上積み」「カタログスペック」至上主義が生まれる→日本のメーカーが作るのはユーザー不在の複雑な商品ばかり
  • 「もうける決意」は、研究・開発職にも必要…インテルでは最終製品の利益で開発者の評価・ボーナスが査定される。自己満足ではなく売れる商品を作る
  • Boys Be Ambitious!は「少年よ大志を抱け」ではなく「若者よどん欲になれ!」と訳したほうがいい…これは10年くらい前から僕も同じ事を考えていた。利益を追求しなければ、資本主義社会は発展しない。全ての企業は経済活動を行っているのだから、そこをムリに隠さず、儲けて大きくなろうという意思が前面に出てきてもいいんじゃないか。
  • 好きだからがんばれる、だから成功できる…仕事や練習が楽しければ成果は自然についてくる。本当に苦痛ならその仕事をいつまでも続ける必要はないんじゃない?
  • ネット時代の「あがってなんぼ」…人と人がネットでつながり、ネット上に様々な知識・情報があふれている時代では、「手段はどうであれ与えられた問題を解決する能力を持っているかどうか」が問われる。「○○はできますか?」という質問に対して「独力ではできないが、助けてくれる人がいるからできる、調べればできる」のは「できる」と言っていいんだと思う。
    実際、僕も職場でAccessの手ほどきをほとんど受けたことはないのだが、なんとかデータベースを構築し、その都度「こんな機能があればいいな」と思うことは、1.本を読む→2.webで似たようなソースを探す→(それでもうまくいかなければ)3.質問する ことで、たいていの必要なことは対応してきた

僕自身はバリバリ文系で、本書で著者が出すクイズ?は全く解けないのだが、大学在学中にこの本に出会っていたら、全く違う人生だったんじゃないかとも思う。文系理系問わず、大学生にはオススメしたい一冊。

著者のブログ(最近は原発関連のエントリーが多いです)
Life is beautiful

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本日の1曲 Fountains Of Wayne「The Summer Place」

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