日本のゲストハウスに泊まってみる-その1-「toco.」

バックパッカーをしていたときは安宿を次から次へと泊まり歩いていて、少し長く滞在する街ではかなり時間をかけてコスパの高い宿探しをしていたものだが、この数年、日本で地方都市に泊まるときはビジネスホテル利用が多かった。

しかし、日本にもよいゲストハウス・バックパッカーズが次々できているらしいということ、また震災後外国人観光客が激減し、人気の宿も泊まりやすい状況になっていることをTwitter上で知って泊まってみることにした。

旅人時代は1日の予算が少ない長期パッカーで、また夜型でもないので、あまり宿で出会った人と深夜まで飲み続けるというタイプではなかったのだが、それでもただ寝るための場所ではなく、そこでの出会いが楽しめるというのはゲストハウスの大きな魅力だと思っている。神奈川県に住んでいる自分が都内のゲストハウスに泊まる必然は何もないのだが、せっかくなのでどんな雰囲気の宿か、どんな宿泊客がいるのか、またその経営手法についても話を聞いてみたいし…いろんな人とコミュニケーションをとっていきたい。

そんな観点から、じゃあどの宿に行ってみようかと考えたが、やっぱりクチコミ評価の高いところがよいだろうと思い、Twitterでバックパッカーズ情報を発信している@M__Mukaiさんにおすすめの宿を教えてもらった。いくつかあげていただいた中ですごくよさそうに思えたのが入谷に昨年オープンした「toco.」さん。古民家を改築してゲストハウスにしているなんて、いかにもガイジン好み。

しかし、泊まって話を聞いてみると外人宿を目指しているわけではなく、外国人・日本人が半々というのが理想なんだそう。そして、災い転じて福となすと言っては不謹慎かもしれないが、震災前はほとんど外国人だった宿泊客が、現在は理想型に近い状態になっているという。日本人のほうがリピーターになる確率が高いから、経営的にも安定するかも。

さて、妻が出産後の静養のため実家に帰っている間にさっそく予約し、5月13日の金曜日に行ってきた。女将さんの話を聞きたいという図々しいリクエストも快諾していただいた。会社帰りだが、ゲストハウスにスーツで行きたくないので会社にガーメントバッグとラフな普段着を入れて、職場で着替えて退社し、19時過ぎに到着。入谷駅に来たのも初めてだったが、駅からすぐの分かりやすい立地だ。

正面の引き戸を開けるとレセプション兼ドリンクスペース。レセプションがバーカウンターになっている。無駄を排したシンプルなデザイン。このゲストハウス、実は2棟に分かれており、通りに面したレセプション棟と宿泊棟はもともと別の家で、この間、2メートルくらい外を歩くことになる。しかし、このおかげで宿泊棟(古民家)の玄関は裏口として23時以降の夜間出入口に使え、レセプションは深夜は閉めることができる。


宿泊棟は大正時代築の古民家で、ガラス戸の枠に至るまでほとんど木でできている。女将さんが冬の寒さは予想以上だったと言っていたが、それも納得。ま、ひと昔前はどこもそうだったはずなんだけど。

見たところ、1Fに8人ドミとツイン、トリプルが1部屋ずつ。それにキッチン、トイレとシャワーが2つずつにインターネット端末。無線LAN完備なのでベッドでもWiFiが使えるのはうれしい。しかし、日本人のゲストハウス、快適さはどこもこのレベルなのだとすると素晴らしい。広さが不十分なだけはしかたないが、清潔さや雰囲気は安宿のものではない。


2Fは6人ドミと女性用ドミ。他にも部屋あるかもしれないが、最大収容人員は27名とのこと。ゲストハウスに限らず、宿というビジネスは収入の天井が決まっているので、どんなに繁盛しても予想以上に儲かることはない。いかに満室に近づけるかの勝負である。その点では、toco.さんは昨年秋のオープンにも関わらず(震災という想定外のブレーキはあったが)非常に上手くいっているようだ。

運営サイドの自己分析では、ホステルワールドのレビューがよいことが旅行者を呼んでいる、ということだった。宿泊者が皆よいレビューを書いてくれる(つまり満足度が非常に高い)ことが、予想していたよりずっと多かったそうだが、それは迎える側の、”知り合いの家に泊まりにきた”くらいの感覚にしたいというフレンドリーさや「トイレはきれいに」「使った食器は洗って戻そう」といった、共用スペースの多いゲストハウスにつきものの貼り紙はなるべく使わないという姿勢が評価につながっているのだろう。


僕は2Fの6人ドミに宿泊。ベッドは大柄な西洋人でも快適なよう丈夫な材料で大工さんに作ってもらったゆったりサイズ。湿気を逃がすように底がすのこになっているなど細かい工夫もされている。荷物を置いて外で食事を済ませてからドリンクスペースでゲストハウスを始めるきっかけから、現在のいたるまでの経緯、客層、想定外のこと、震災の影響などについて話を聞いて過ごす。意外なのは、バックパッカー友達が集まって始めたわけではないところ。石崎さんはパスポートを持ってないというし、宮嶌さんも特に旅好きではないという。もっとも、彼女の言うとおり旅好きが主人だと、お客さんの話を聞いて自分も出かけたくなってしようがかもしれないw


スタッフやサービスといったソフト面も、古民家という「和」の雰囲気と快適なスペースというハード面、両方とも十分満足のいくものでレビューの評価が高いのもうなずける。外国人だけはなく、地方から東京に来るが、夜は知り合いと飲む予定がないといった日本人にもオススメの宿である。(夜に着いて早朝出たのでいい写真がなくてスイマセン)

最後に、色々なことを教えてくれた女将の宮嶌さんはじめ、石崎さん、桐村さん、(今回は会えなかったが)代表の本間さん、皆25歳と若いのだが、このゲストハウスを始めるにあたっても、国内組、海外組と分かれて相当数の宿をリサーチをしているし、会社形態で起業、運営し、今後の展開も視野にいれつつ実験的なイベントも行うなど経営感覚も持っている。ずっと年下の皆さんだが、いろいろ勉強させてもらった。ありがとうございました。

本日の1曲Daft Punk 「Derezzed」

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