Day322 悪名高き町

昨夜は同室のインド人兄ちゃんが音楽をかけ続けていたのでなかなか寝付けなかった。いちおう遠慮してボリュームはしぼっているのだが…そういえば、インド人でヘッドホンを使っているのはあまり見かけない。基本的に中国人とインド人は他人に対して配慮する習慣がないのだろう[:ふぅ〜ん:]
さて、2時前にこそっと起きてバックパックをかついでバスターミナルへ。行ってみるとJ&K州公営「Super Deluxe」バス(笑)で、座席は2席×2列でリクライニング付だった。だから距離の割に高いのか、たまたまいい車両にあたったのかは不明。屋上にバックパックを載せて出発を待つ。定刻の2時半に出発しスリナガルを目指す。宿では実質2時間しか眠れなかったのですぐ眠れるかと思ったが意外と寝付けず。2時間ほどでドラスの町を出てゾジ・ラへの登りに入り、この辺りになると寒さでますます眠れなくなった。5300m超のカルドン・ラでも大した寒さではなかったので3500m前後の峠越えなど問題ないだろうとサンダル履きにしたのは失敗だった。峠への道は緩やかで以前、川蔵公路でラサ入りしたときの峠に似た雰囲気だ。周囲の雪がだんだん増え、同時にうっすらと明るくなってきて美しい眺めを楽しむことができた。しばらくウトウトしてたら峠でポリスチェック停車をしていた。ここから下りに入る。車道の角度は緩やかなのだが、真下に見える小川までの高度差は相当なものでこの斜面を大きく何度かジグザグをきって下りて行く。スキー場の○○の壁と呼ばれるような急斜面をボーゲンで端から端へとゆっくり下りていく感覚に近い。久々に恐怖を感じた下りだった[:たらーっ:]
谷まで来ると周囲の斜面には針葉樹がたくさん生えており、岩山か砂山しかなかったラダックから下界に下りたことを実感する。しばらく進みソナマルグで朝食休憩。ここはスイス的な雰囲気でとても美しいところだ。ポニーライドの看板が出ていたりするのでインド人避暑地として売り出し中と思われる。朝食に食べたバターを塗ってあるローティーはとても美味かった。
ここからスリナガルまでは90km弱。この先ほとんどずっと数百m間隔でマシンガンを持ったインド軍兵士が警戒にあたっている。さすがテロの本場スリナガルだなぁと変に感心。常時こんな状態でもゲリラが出るというのが信じがたい。インド軍車両が30台連なって来たり、橋があったりするとすれ違いができないのでしばらく対向車が通り過ぎるのを待たなければいけないのだが、スリナガルが近づくにつれてだんだん交通量が多くなり、こういうすれ違い待ちの場面が増える。カシミールの道は舗装状況はいいが幹線道路でも幅があまりないので大型車のすれ違いで時間をとられてしまう[:ぶー:]
10時半ころようやくスリナガルの町に入る。町の中心では武装兵士は意外と少ないようだ。ゲリラの入退路を絶つことに重点を置いた配置なのかもしれない。バスターミナルに着くとすぐハウスボートの客引きがやって来た。スリナガルはテロだけでなくぼったくり旅行業者、ハウスボート経営者でも悪名高いところなのでできれば相手をしたくない。ハウスボートには泊まらないと言って追っ払うが、実のところはここに来たらハウスボートというものを体験しなければ、と思っていたので内心ちょっと困っていた。ここには1000を超えるハウスボートがあるというし、頼みの綱ツーリストレセプションは日曜で休みなのだ。1人、バスターミナルで働いているというオヤジが熱心に「うちのGHには日本人がたくさん泊まってリコメンドもあるからとにかく見てくれ、嫌なら他に行けばいい」と誘うので、あてもないしとりあえず行ってみることにする。
着いてみるとやはりハウスボート。だが、ダル湖畔につながれているデラックスタイプではなくベトナムのフエで見た船上生活者が住んでいるようなオンボロ船だった。この川沿いにはこの手のボロボートがたくさん並んでいる。きっと宮本輝の「泥の河」ででてきた「連れ込み船」も数隻あるだろう。
案内されて日本語のリコメンドを見る。複数の人が勧めているし問題のある船ではなさそうだ。部屋はハウスボートという優雅な響きとは180度反対で木造の下宿部屋という雰囲気[:たらーっ:]
隣には1畳ほどのトイレ、シャワールームになっていた。どうせゴージャスな船には(高くて)泊まれないので、ここで値段の折り合いがつけばよしとしよう。オヤジは奥のいい部屋に食事付で600Rsを提示してきた。そんな金額じゃ話にならないので自分のバジェットは150Rsだと言ってNoなら他を探すと腰をあげる。オヤジは250Rsとか部屋のみで150Rsとか条件を下げてきたが、僕はこれだけあるボートを最初の1艘しか見ずに決めるつもりもなかったので全く譲らず。結局、他の人には他言無用という条件で言い値が通った(ここに書いたけど、ボートの名前は出してないから約束は破ってないでしょうw)。
お茶とローティーをいただいてから部屋で荷解き、それから久々にシャワーを浴びる。水シャワーはちょっときつかったが何とかガマン。それから洗濯。当然のことながらこんな低グレードハウスボート(たぶん高グレードでも一緒だろうが)には汚水を浄化するシステムなどなく、トイレ、シャワーの水はそのまま船から突き出たパイプを通って川へ流れていった。それを見てしまうとどうもこのハウスボートを利用すること自体環境破壊に手を貸しているような罪悪感がある。欧米人はこういったところに敏感だから「ハウスボートを利用するな」と訴えている人もいるだろう。
部屋で一休みしていたら、遠くで爆発音、続いて数発の銃声が聞こえ、またもさすがスリナガルと感心。この程度は日常茶飯事らしく周囲の動きは全くない。まだ土地勘が全くないので町歩きに出かけようとしたらオヤジがバスターミナルから帰ってきて、まぁ昼飯でも食おうというので家族と一緒に昼食をいただく。オヤジは笑いながら「さっきの銃声を聞いたか?」というのでYesと答えると、「さっき車に乗って演説していた奴を狙って発砲したんだ。だからバザールのほうは閉鎖された。ダル湖のほうは問題ないからそっちに行ったらいい。」と事も無げに言った。その勧めにしたがって湖をめざして歩くが、方向を読み違えジャンムー側へ歩いてしまった。こちらは警戒が厳しく、武装兵士が多い。さすがにテロがあったばかりだから緊張感がある。行く先々にマシンガンを構えた兵士がいるところを歩くのは気持ちのいいものではない。やはり事件に巻き込まれてもおかしくないところだなぁと実感。長居は無用だ[:ムニョムニョ:]
さっき来た道を引き返してダル湖へ。ゴージャスなボートが百隻以上並んでいて、なるほどこれが本物のハウスボートかと納得。しかし、このうちの何隻に宿泊者がいるのだろう???僕はハウスボートというのは夜は宿泊客を泊めて湖をさまようものかと思っていたが、動くものではないらしい。ハウスボートに加え、シカラというゴンドラ風遊覧ボートもあるが、こちらもほとんど乗る人はおらず、ほとんどの船でオヤジが昼寝している状態だった。今はインド人観光客が多い時期らしいがそれでも明らかに供給過剰。ネパールのポカラもそうだが、観光客が増えると皆、先のことは深く考えずEasy Moneyを求め借金してGHを建てたりハウスボートを作ったりするのだろう。そして、観光客が減っても借金は残っているのでやめるにやめられず少ないパイを奪い合ってどんどん買い手市場が強まり相場が下がっていくという悪循環だ。さらに、中には悪質な手口で金をむしり取ろうという連中が出てきて、それがさらに観光客を減少させる。まさに泥沼状態だ。耐えられずに廃業者が多数出てようやく需給のバランスがとれるようになるのだろう。それまでのガマン比べ、まっとうな商売をしている人が残ってほしいものだ。

本日の1曲 Bon Jovi「UNDEVIDED」

↓低グレードハウスボート(外観)

↓僕の泊まった部屋

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