結論から先に言うと、非常に楽しめつつ、今の20代を理解するにあたってのよい参考書だ。
僕は筆者の言う「ガンダム世代」から数年後にあたるが、タテ社会で育ち、働いてきたので、ガンダム世代の価値観は極めて自然なものである。しかし、様々な経験を経て、今の価値観・考え方はかなり「ワンピース世代」に近くなっていると思う。振り返ってみると、タテ社会の”当たり前”に対して疑問を持つようになったのは、一度、会社という枠から外れて海外で自由を満喫して生きた経験と、終身雇用制の崩壊によって会社という組織への信頼が失われたことによる影響が大きいのではないだろうか。
実は、僕は「ONE PIECE」は6巻までしか読んでいない。が、それくらいの知識でも著者のいう「仲間」を軸にしたヨコ社会という感覚はよく理解できる。そして、今の若者が、「ひとりひとりは良い人でも、組織や社会になるとやむを得ない悪意を振りかざしてくるのが上の世代だということに気づいている」という感覚も納得だ。
著者の視点はユニークだが、中でも面白いのが、「ワンピース世代」の特徴として「コミュニケーション能力が高い」というポイントである。これは、上の世代でからは正反対の評価をされているのだが、コミュニケーションのレベルを仲間内と外部で使い分けているということらしい。つまり、仲間でないオッサンたちとはまともに付き合っていないということか。そこに、ブライトさんの鉄拳制裁は通用しない。
もう一つのポイントは、ルールについての考え方で、ガンダム世代・団塊の世代では、社会的観点に照らして自分の行為がマナーや道徳に沿っているかを判断するが、ワンピース世代は自分自身に恥じる点がないか、また仲間に迷惑がかかっていないかが重要であるということ。これもなるほどと思うところで、そのように考えると若者のマイルールも分かってくる。もっとも感情的にそれが許容できるかどうかは別問題だが…
ところで、僕が本書を読んでいて「ワンピース世代」ってこんな感じかなと思ったのが、先日訪問して話を聞いたゲストハウスtoco.の4人。25歳の4人の仲間が、会社を作ってゲストハウスを運営していく。そこに見える価値観は、社会がこうすべきというものではなく、自分たちがこうやっていこうというものだ。もっとも、僕は彼らがワンピースを読んでいるのかは知らないけど…
そして、第5章、6章は、ガンダム世代、ワンピース世代の違いと特徴から離れ、両者の視点、さらに勝ち逃げ「団塊の世代」も加えて、これからの日本社会を読み解いていく。震災後さらに高くなった日本の将来に対する不安が多くの作家に未来への提言をさせるのか、あるいは出版社が求めるのかは分からないが、最近の書籍は終章で日本社会の未来について語る形式が多いように感じる。ここで語られるシナリオも非常にリアルで、こういうことも起こり得るなと考えさせられる。
このままでは筆者やドラッカーが考える通り「世代間闘争」の可能性がジワジワ高くなっていくだろう。日本の政治家はまだ上の世代が多いが、これからはガンダム世代が日本という国の舵取りを担っていくことになる。上の世代の政治家のように票田である高齢者受けする政策に偏るのではなく、若者の視点でも未来を考えていく責任を持っていることを再認識するよい機会にもなった。
本日の1曲 Fair Warning「Out on the Run」
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