Day288 複雑な思い

6時半に目覚めたらもうパルヴェイズはマンセラへと出かけた後だったので一人で朝食(プラタにゆで卵)をいただく。自家製卵の黄身はまっ黄色でウマイ。滞在中はサルマが主に面倒を見てくれたのだが、今朝は着替えてさっぱりした顔をしていた。テント村ではいつもきれいにしていた衣装持ちの子だったが、昨日久々に会ったときはちょっと顔もすすけていて、服もちょっと汚れていたので気まずかったのかもしれない。
朝食後、昨日行けなかったサダフ、サバ姉妹の家を訪ねる。この一家はヌーリーでもいちばん高いところにあるので登っていくのも一苦労だ。ようやく家が近づくと「エーイ」とアリアが声をかけてきた。彼女の家はもう一段上にあったのだ。なるほど、もともと近所だからテント村でも仲良しだったのか。サダフ一家に挨拶し、またお茶をいただく。オヤジ(ジャン・ムハンマド)は兄弟たちと廃材を使って新しい共用キッチンを作っているところで、崩れた家や兄弟で並んで住んでいるテントなどを案内してくれた。サバとワジャードは久々の再会で初めはちょっとシャイな感じだったが、すぐにもとの甘えん坊に戻った。近所のヤスミンという子も交えてしばらく子供たちと遊んで過ごす。

11時頃ここを出てザフールのところへ行く。いつものようにボヘーッと隣に座り、たまに飛んでくるヘリコプターを追ったりして過ごしていると、11時半頃ムクティアールが来てシェール・アフザルのところで約束してあるランチへと案内された。今日は昼がシェール・アフザル、夜がザフール家と食事がアレンジされていると昨夜パルヴェイズに言われていたので、ザフールのオヤジに夜食事に来ますと告げて移動。行ってみるとシェール・アフザルはローティーを焼いていた。今日は彼の兄ムシュタークの婚約発表らしく、ごちゃごちゃした雰囲気の中で何人かの男と一緒にチキンをいただいた。どこへ行ってもチキンが出てくるのでちょっと申し訳なく思う。食後、ムクティアールの案内でジープ道を上がってヌーリー&(隣の)カラス村の端まで行ってみる。この次の集落まではだいぶ距離があるようで、ヌーリーと谷を挟んだカラスで大雑把に一つの村という感じだ。テント村に入っていた家族でも実際いくつかはヌーリーではなくカラスに家があることが分かった。昨日から世界初の(そして誰も使わない)ヌーリーMAPを作っており、今日はずっとそのノートを持ち歩いている。
ジープ道からずっとカラスの集落を降りていき、昨日も訪問したリアカット達の家で休憩、お茶をいただく。この辺りの家族とはテント村でも挨拶程度しかしたことがなく、名前も全然覚えていないのに向こうはさも親しげに迎えてくれるのが不思議だ。しかし、一緒にお茶を飲むだけでほとんど会話にならず、皆元気にしてるか?他に誰か来る予定があるのか?といった質問を受ける程度。まぁ、このボーッと過ごす時間がツライようだとパキスタンでは生きていけない(笑)。
この後、引き続きムナワールのテントに移動し、ここでもお茶をいただく。この家は男手が少ないからか娘婿のテントNo32に入っていた兄ちゃんも同居しているようだ。パルヴェイズのテントに戻って一休みしているとジャミールがやってきた。パルヴェイズとマンセラで会って、僕が来ているからヌーリーへ行くように言われたらしい。一通り状況などを話してから彼の案内で再びジープ道を上がり、カラス方面まで散歩に行って戻る。
夕食に招待されているので7時前にザフール家に移動。ザフールはもう自分のテントのベッドに入っていて、僕は別のテントに案内された。そこにはザフールの兄弟たちもいたのだが、食事は僕だけで彼らやオヤジは後で食べるという。招待はされたものの何だか寂しい食事だ。パキスタンの家ではたいてい食事に呼ばれると家の主人(+その兄弟がいる場合も)がゲストをもてなし、他の家族は別室で食事をしている。で、2回目になると主人もご飯を運んでくるだけで食事は家族とするようになったりで、一人ご飯になってしまう場合がままある。
食後、パルヴェイズのテントに戻ると、ワシームが来たのでしばらく話をする。イスラマのテント村とヌーリーとどっちがいいか?と聞くと、イスラマと即答されてしまい、ちょっと複雑な気持ちになった。子供たちにしてみればやはり電気も学校もきれいなトイレもクリケットグランドもある環境のほうがいいのだろう。与えすぎてはいけないと気をつけ、普通に安心して健康な生活を送れるレベルの環境を提供したつもりだったが、それでも家を失った山間部での暮らしよりはずっと良かったということだ。こういったことも若者が村を離れていく一因となっていくのだろうか、そう考えると少し気が重くなる。

本日の1曲 Madonna「One More Chance」

↓ヌーリーでの再会(その2)

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