【読書メモ】20代の企業論(榊原健太郎著 ダイヤモンド社)

サムライインキュベートCEO榊原健太郎さんが自身の歩みと起業の現実について熱く語った1冊です。本書を読むまでは、榊原さんのことは長い名前だなぁというレベルの知識、印象しかなかったのですが、ドでかい夢を持って起業家を支援している人だったんですね。

本書には、いくつか刺激的なキーワードがあるので、このpostではそれをたどっていきメモにしていくことにします。早い段階で出てくる「起業には不条理の体験が不可欠」というのは、完全に賛成です。順風満帆な会社員生活を送っている人、または仕事の内容、ボリュームには不満を言いつつももらっている金額には満足している人は、何かアイデアがあっても起業という選択を取らないことが多いはずです。著者の言うとおり「耐性」と「突破力」は、うまくいってる人生では望んでもなかなか養えないものです。著者のこれまでの歩みも全く当初の期待通りというわけではありません。しかし、『「できるできない」でなく」「やるかやらないか」で人生は決まる』と自身が言うように、大きな夢を持ってその実現に向けがむしゃらに突破していくことで、多くの人が助けてくれるのでしょう。

第5章「日本版エコシステムができた」で紹介されている起業家同士のネットワークや起業家を支援する仕組みの存在は本書で初めて知りました。この数年で(IT関連についていえば)起業を取り巻く環境が大きく変化していることがよく分かりました。確かに以前と比較すると起業にお金がかからなくなってはいるのでしょうが、ITを使うならエンジニアは必要なわけで自身でWebサービスなどを作ることができなければ人を雇うか外注をしなければなりません。実際には、サービスを開始して売上が立つようになるまでエンジニアを雇うのはかなりのコストがかかるのでしょうから、それを考えるとオフィスやサーバー、通信費などのコストが下がっても全体に与える影響はさほど大きくないように思います。

また、ちょっとガッカリだったのが6章で例示されている「100の事業アイデア」で、多くは事業アイデアというよりは「こういうサービスがあったらいいのに」という大雑把なイメージでした。もう少し具体的なものを期待していた僕は、一方で「あぁ、オンリーワンでなくても、まずはこういう一般的なものでいいんだ」という安心も感じました。

アイデアを考える際の基準として「5年後にどうなっているか」を考えるのは特にITでは大事でしょう。第7章では起業家のアイデアを検証、ブラッシュアップさせる際の手法が紹介されています。それらは

  1. PEST分析
  2. 5F分析
  3. 3C分析
  4. ミッション・ビジョン
  5. ポジショニング
  6. 4P
  7. オペレーション

です。オペレーションが最後になっていますが、非常に重視されているとともに、単独でするよりインキュベーションを利用するメリットが大きい部分といえます。人数の少ないベンチャーでKPI(Key Performance Indicator)をしっかり決めてその数字を上げていくことに注力しないと残念な努力になりかねないというのは、自分自身も改めて考えなおさなければならないと感じた点でした。

この本は(悪い意味ではなく)理論、理屈よりも、一気に読んで著者の熱を感じ、その熱が冷めないうちに行動することで価値が生まれるように思います。なので、読んでいる時は一気読みに近い勢いだったのに改めてメモにまとめてみると、あまりポイントとして残しておく部分はないなぁという気がしました。とは言え、起業を考えたときには自身をインスパイアしてくれる本として再読したいと思います。

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