本書の核心がタイトルそのままですが、TVチャンピオンなどの企画を実現させてきた放送作家の著者が企画を通すためのノウハウをまとめた1冊です。分厚い企画書を作るのが当たり前になってしまうと、「ひと言」で簡潔に表現することに対して「手抜き」をしていると思われるのでは…という恐怖に近い感覚があり、なかなか勇気がいることに思えます。しかし本書を読んで、エネルギーのかけどころとして、実は、時間をかけて企画書を作るという部分は間違っているのだと思えるようになりました。
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また、新鮮だったことは企画を表すのは見えるひと言で、キャッチコピーとは違う、センスはいらない、むしろベタがいいというところです。これも、今までのエネルギーのかけどころが間違っていたことに気づかせてくれるポイントです。まず、社内で企画を何かしらのアイデアを実現させようと思ったら、理解してもらうことが第一で、カッコいいフレーズはその後で考えればよかったのです。
というように、本書には「企画はひと言で書こう」という容易にタイトルから想像できることだけではなく、アイデアを実現させるための知恵や気づきがたくさん収められています。そして、テクニック以前に、企画書を書くのが仕事ではなく、アイデアを実現させ、世の中を少しでもよくしていく、という本来の目的を再発見する意味で非常に有意義な1冊でした。
以下、企画を立てるために覚えておきたい知恵を抜き書きします。
- 見える企画に有効な5つのS…「Short」「Simple」「Sharp」「See」「Share」特に、Simpleのところで書かれていた 最終的な決定権を持つ人に直接プレゼンができるわけではない。上司がひと言で説明できるシンプルなものでなければ通らない、という視点は大事です。
- ベタと新しさのバランスを「新しさ」×「実現可能性」のマトリックスで測る
- ヒットのかたちは「らせん形」…これまであったものにどう新しさ・付加価値をつけるか
- ヒットのサイクル…定点観測でトレンドの波をつかめ
- ひらめきのタネを集める…インプットから記憶のストックを増やす。心に引っ掛かったことはメモに残す
- 企画書の流れは「ナナヘソス」…なになに!?→なんで?→「へぇ~!」「そう!」「なるほど!」→「スッキリ!!」
- あえて全てを伝えず、空白を相手が思いつくことで味方に巻き込む
ひと言を作り出す3つのステップ
ここは非常に実践的で応用範囲が広いので、プロセスを簡単に書いておきます。
- 「なんのために」「なにを」「どうする」の枠に当てはめる
- 「なんのために」を突き詰める。企画の主旨・目的を明確にする。
- 「なにを」「どうする」を3つのC「Compare」に「Can」「Change」に分類する
- ムダな言葉を削る
- できた「ひと言」を見直す…目的はあるか?、新しさと実現可能性はあるか?、さらなるアイデアを引き出す空白はあるか?
企画部門であるなしに関わらず、仕事の楽しみの1つは自分のアイデアを実現させていくことにあるでしょう。本書はその「てびき」としてオススメの1冊です。
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