読書家として知られる齋藤孝氏が、改めて読書の重要性と読書術、さらに社会人にオススメの本について書かれており、300ページ超とかなりボリュームのある1冊。とはいえ、齋藤氏の本は読みやすいので見た目ほど時間はかからないと思います。
大人のための読書の全技術 | ||||
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最初の方で、著者の読書に関するライフスタイルやどれだけ本からの学びが大きいかが書かれています。僕には、本書で紹介される読書術を駆使しても、多い日は1日10冊を読み、自宅の壁が本棚で埋まってしまうという著者のレベルには達せるとはとても思えませんが、本を読む習慣のある人とない人で思考力、想像力、感性などに大きな差が出るであろうことは100%同意します。
著者の言うとおり、現在ではインターネットの普及によって入ってくる情報の量は10数年前と比べると遥かに増えているでしょうが、それらの多くは無秩序なもので、読書によって得られる「生きた知識」とは違っているのでしょう。SNSでのコミュニケーションはフォロー&ブロックが簡単にできるので自分と同質な人との水平的なものに終始しがちなのに対して、読書は垂直次元の思考を深めることができるという主張ももっともです。だから、読書の習慣がない人は、まず読書の時間を確保するライフスタイルの確立をしないと社会人として淘汰されてしまうと警鐘を鳴らしています。
古典の重要性や多種多様な本を読め、といった部分は読書に関する多くの本で勧められていることですが、本書でも同様のスタンスをとられています。多種多様な本を読めと言うことは簡単ですが、言われた方は自分に関心がない分野の本を読むことになるので「じゃあ何を読めばいいの?」となってしまうのですが、本書では最後に著者オススメの本が50冊紹介されています。これはありがたいですね。自分のメモとして最後に全部リストを書いておきました。ほとんど読んだことのない本でした…本当にバラエティに富んでいます。
僕自身は1年に100冊前後は本を読んでいるので、本を読む習慣はできていると思っていますが読むスピードは遅いです。それは今までも感じていたことですが、Kindleを購入し、読書を開始して数ページ進むと読み終えるまでの想定時間が倍に増えていることで明確になりました。そんな僕なので、本書の中で「速読」についての項目は高い関心を持って読んだのですが、1つは「目を速く動かしていく方法」2つめは「全体の中で、必要な部分だけをピックアップして、そこを集中的に読む方法」が紹介されており、本を読めば読むほど知識量が増えて自然と読書のスピードは上がっていくものだという答えは、これだけの本を読みこなす著者の回答としては、当たり前過ぎるというか、正直ちょっとガッカリしました。
結局、本を読み終えるという言葉の定義が、僕のイメージしている「全ページに目を通す」というものと、「その本から自分にとって必要と思われる情報を抽出できれば読了」という部分が決定的に違っているので、僕のいう読了までのスピードを上げるには目を速く動かす方法しかないようです。そのためにタイトル、帯、カバー袖の文章から、目次、小見出しなどで本全体のおおよその趣旨をつかむという作業が勧められていますが、これも既視感のある話であまりオリジナリティを感じられるものではありませんでした。「フォトリーディング」もうまくできなかったし、僕にとって決定的な速読術と言うのは永遠に見つからなそうです。
しかし、大きな収穫もありました。非常に有効だなと思ったのが、コレです。「本を読む目的を設定することで的確な読書ができるようになる。具体的には、1.本を読む目的の設定、2.本を読み終える時間的締切の設定の2つである」。1は、「今読んだ本の内容を説明してよ」と言われ、え~となるようではダメ、この本の内容を誰かに説明するという負荷をかけて読むことです。そのためには集中力が必要。これが速読の第一歩…結局僕に足りないのは集中力なのかもしれません。
以下、覚えておきたい部分の抜き書きです。
・書店には買う気で入れ。一冊は買おうという心構えを持つことでよい本を限られた時間で探すことに必死になる。
・音読することで言葉の意味が理解できるようになる。それは、電車やバスを使わずに自分の足で遠足に行くようなもの。
・引用ベストスリーを意識して読む。本の中で引用したい文章を3つセレクトし、その3つを選んだ理由をあわせてメモしておくことで、自分のその作品への関わり方を整理する。
・本を読み、メモを習慣づけることで質問力を向上させる。話を聞いても質問ができないのは耳から入ってくる情報を整理できてないから。モウリーニョは試合中に取ったメモを見てハーフタイムに選手に的確な指示を出す。
・「一を知って十を知る力」があれば「できるヤツ」と評価される。そのプロセスは「想像力」→「理解力」→「予測力」→「提案力」である。
・相手の心をつかむ話は相手によって違う。キーワードを見つけるということは相手の潜在的な欲望や願望を言い当てる技術である。最初の1分で相手の心をキャッチする。
・本で読んだことを「これ知ってます」で終わらせない。読んだことを自分の中でいかに活用するかいつも考え続けること。
・デザインシートを活用する。フォーマットを使って考えをまとめる習慣をつける。
- 対象ー誰なのか
- タイトルーテーマは何か
- 狙いー何のために行うか
- テキスト(素材)ー材料は何か
- キーワード(キーコンセプト)ー中心となるコンセプトは何か
- 段取りー具体的にどうやって行うのか
- 仕込み(裏段取り)ー準備はどうするのか
社会人が読んでおくべき50冊
- 利己的な遺伝子(リチャード・ドーキンス)
- 知の逆転(吉成真由美編)
- 宇宙は何でできているのか(村山斉)
- 世界がわかる理系の名著(鎌田浩毅)
- 進化しすぎた脳(池谷裕二)
- 新しい生物学の教科書(池田清彦)
- 面白いほどよくわかる!心理学の本(渋谷昌三)
- 寝ながら学べる構造主義(内田樹)
- ジャガイモの世界史(伊藤章治)
- 日本の歴史をよみなおす(網野善彦)
- 常用字解(白川静)
- 漢字と日本人(高島俊男)
- 1冊まるごと佐藤可士和
- ムハマド・ユヌス自伝(ムハマド・ユヌス、アラン・ジョリ)
- 代表的日本人(内村鑑三、鈴木範久)
- 学問のすすめ、福翁自伝(福沢諭吉)
- 論語と算盤(渋沢栄一)
- 五輪書(宮本武蔵)
- カーネギー自伝(アンドリュー・カーネギー)
- フランクリン自伝(フランクリン)
- ミステリーの書き方
- マンガ脳の鍛え方(門倉紫麻)
- ガンダム世代への提言(富野由悠季)
- 古代エジプトうんちく図鑑(芝崎みゆき)
- 大江戸省エネ事情(石川英輔)
- 商家の家訓(吉田實男)
- 経営者の条件(ドラッカー)
- 学習する組織(センゲ)
- ビジョナリー・カンパニー2(ジム・コリンズ)
- マネー・ボール(マイケル・ルイス)
- 発想法(川喜田二郎)
- 新インナーゲーム(ガルウェイ)
- ブラック企業(今野晴貴)
- デフレの正体(藻谷浩介)
- 少子社会日本(山田昌弘)
- ヨハン・クライフ サッカー論(ヨハン・クライフ)
- ジョゼ・モウリーニョ(ルイス・ローレンス、ジョゼ・モウリーニョ)
- 決断力(羽生善治)
- LEAN IN(シェリル・サンドバーグ)
- 不格好経営(南場智子)
- 売る力(鈴木敏文)
- 俺の考え(本田宗一郎)
- 日本電産永守イズムの挑戦
- 松下幸之助の金言365(松下幸之助)
- 人間の土地(サン・テグジュペリ)
- 腕一本・巴里の横顔(藤田嗣治)
- 思い出トランプ(向田邦子)
- たとへば君(河野裕子、永田和宏)
- 一茶句集(小林一茶)
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