【読書メモ】イノベーション・オブ・ライフ(クレイトン・M・クリステンセン著 翔泳社刊)

イノベーションのジレンマ 」の著者で、ハーバードビジネススクール(HBS)のクリステンセン教授が2010年にHBSの卒業生全員に向けて行った講演を基に書かれた一冊。ビジネスで有効な理論を家庭に応用するスタンスで書かれているのが新鮮です。多くのHBS同級生が金銭的な成功を収めたにも関わらず、最終的に、家庭の崩壊、犯罪者になるなど計画した道から外れてしまうことへの疑問が本書執筆の動機になっていています。

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photo credit: boegh via photopin cc

本書は、大きく3章から構成されており、それぞれ

  1. どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるか
  2. どうすれば伴侶や家族、親しい友人たちとの関係をゆるぎない幸せのよりどころにできるか
  3. どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう

というテーマを持っています。そして、各章は「何が、何を、なぜ引き起こすか」を考える強力なツールである”理論”の紹介とそれを問題に当てはめるという構成で成り立っています。

以下に本書で紹介される理論と家庭への応用についてポイントを抜き書きしていきます。

動機づけ(モチベーション)理論:仕事に対する満足感には衛生要因(欠けると不満につながるもの…報酬、ステータス、安定性など)と動機づけ要因(愛情を生み出すもの…やりがい、評価、責任、自己成長など)の2つがある。報酬は衛生要因であり、不満がない=満足ではなく、”不満でない”レベルにしかならない。

意図的戦略(予期された機会を中心とする戦略)と創発的戦略(意図的な計画を推進するうちに生じる、様々な問題や機会の交じり合ったもの)のバランスをとる:新たな方向性を追求するという明示的決定を下した時、創発的戦略は新たな意図的戦略となる。

どんな戦略が有効か考えるためのツールに「発見志向(DDP)計画法」がある。「これが成り立つためには何が言えればよいのか?」と考える方法。仕事選びに応用すると、その仕事で自分が幸せになるためにはどんな仮定が立証されなければならないか?と考える。

資源配分のパラドックス:長期的成功をもたらすものよりも直ちに満足が得られるような取り組みに飛びついてしまう。プライベートでも同様に時間や労力などのリソースをすぐ目に見える成果を生む活動に無意識に配分しがち。

良い資本と悪い資本:最終的に成功した企業の93%は当初の計画を断念していた。初期に間違った戦略を推進して多額の資金を無駄にしないよう注意を払う。人生においては、家族や友人たちと深い愛情に満ちた関係を築くたまの投資を怠ることがないように優先順位を考える。子どもの成長への投資は順序を間違えると取り返しがつかないことを認識すべし。

製品・サービスを購入する動機は「自分には片付けなくてはならない用事があり、この製品・サービスがああればそれを片付ける助けになる」思いであり、ユーザー属性ではない。ミルクシェイクによって片付けられる用事は何か?を考える。学校を雇う用事は”達成感を得ること”、”友人たちと一緒に物事に取り組むこと”である。伴侶との関係では、相手のために価値あるものを犠牲にすることで相手への献身が深まる。

自分の能力を理解し、未来をアウトソーシングしない:能力は「資源」「プロセス」「優先事項」の3つに分類される。子どもも同様、資源を与えることだけでなく、アウトソーシングによってプロセスを育む機会を失わないように留意する。

「正しい資質(ライトスタッフ)」よりも任務にあった経験を重視する。子どもにも将来のために必要な経験をさせる。あえて難題に挑戦させ、失敗を経験させることも必要。将来どんな力が必要になるかを考え、そこから逆算して何を学ばせるかを考えるのが親の役割。

「文化」:共通の目標に向かって力を合わせて取り組むことを通じて文化が形成され、それからは必要なことを自律的に行うようになる。一貫した態度をとり続けることが文化の醸成となる。自分がそばにいないときでも、子どもが正しい選択ができるようになるためには適切な家庭文化を築くことが必要である。

限界費用と総費用:競争が存在するとき、既存企業が限界費用の理論に従って既存資産の活用を進めると、競争力を失い、総費用を超える代償を支払うことになる。善悪の判断をするときに限界費用の考え方を用いる、つまり「この一度だけ」を自分に許すことが、最終的には大きな損失になることを認識すべき。何を信条とすべきか決め、それを100%守る。

目的とは:「自画像=自分のなりたい自分を考える」「献身=深く関わる」「尺度=人生を評価するものさし」からなる。目的は運ばれてくるものではなく、自力で明らかにしなければならない。ただし、目的を達成するための手段は創発的なものであることも多い。

まとめ

もっと早いうちに出会いたかった本ですが、まだ子どもが小さいうちに読めたのでよかったです。家庭を持つ頃に読むのがいちばん適しているように思います。人生において真に大事なものは何かを誰もが明確にし、長期的な視点を持ってそれを守っていかなければ、無意識のうちに間違った方向へ進んでしまうことは往々にして起こります。そして、気づいた時には手遅れになる場合もあります。そうならないために、本書が与えてくれた啓発は非常に大きなものになるでしょう。

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