雪もちらつく寒さの中、最近バースデー割引も復活したJAL 日本航空主催の機体整備工場見学会に参加してきた。実は、仕事でJALさんには(ANAさんもだが)お世話になっており羽田や成田の社内にはお邪魔したことがあったのだが、元々飛行機&空港好きということもあり、メルマガでお知らせを見て飛びつくように参加申込をしたわけだ。今日伺った話では、相当の競争率の中からコメントなどを読んで選ばれたようなので、更新頻度も読者もまったくショボイこのブログ(熱いコメントを書いた記憶もない…)が当選したのか全く謎だ(笑)。
さて、内容紹介より先に満足度を言ってしまうと
120%以上の満足!!
(今年になってまだ40日だが)間違いなく今年に入って一番ワクワクした1日だった。
では、さっそく流れに沿って内容を書いていこう。
会場は新整備場駅近くのJAL M1ビル。まずは、この6Fの一室で整備を中心とした安全面のお話を伺う。
<展示されていた松井選手のサインボール>
整備の段階には、毎フライト前に行うT整備、600飛行時間で実施するA整備、6000飛行時間で実施するC整備、そして16000飛行回数で実施するM整備の4段階があり、こういった基準は機体メーカーのリクエストをベースに各社が自主基準を設定し、それを航空局が認可しているそうだ。(数字はBoeing777の場合)
続いて、具体的なT整備工程の流れをスライドを見ながら説明していただいた。自分が担当するシップが到着する前に、出発地での整備状況や過去の整備ログをPCでチェック、ヒューマンエラー対策として、前に人が触った箇所は入念にチェックするというのはMake Sense!自分の仕事を振り返ってみても、99%のミスは手入力部分で、計算式が弾き出した結果はあまり疑う必要はない。それからもLandingの様子を見て各パーツが正常に機能しているかをチェックするなど、シップがスポットに入る前から仕事は始まっているのだ。T整備にあたるのは3名くらい、その人数で20~30分の間に数多くのチェックをするのはすごく大変だと思う。そして、一連の作業は一級航空整備士によるサインで終わり、ようやく離陸OKとなるのだ。ランウェイへ向かうシップを見送って手を振る瞬間が整備士として一番達成感を感じる瞬間だという説明を伺っていて、その気持が分かる気がした。
<本日アテンドして下さった整備士、パイロット、CAの皆様>
続いて、ハンガーへ移動し、ヘルメットを着用して実際の整備状況を見学。2つのハンガーでエアバスA300-600Rなど4機の整備を見ることができた。ここでもいろいろ説明いただいたのだが、飛行機を目の前にして興味は「見る」方へ自然と向かってしまう。
ハンガーの開いている扉からはちょうど着陸する飛行機を見ることができた。地上の目線で着陸シーンを見ることができるのも滅多にない機会だ。
スペアのタイヤがたくさん置いてあったが、着陸時のプレッシャーが自動車の比ではない航空機のタイヤは5~6回ラバー部分を貼り替えて使用しているのだそうだ。ちゃんとタイヤには”R-○”という形式で何度目の貼替えか分かるようになっていた。
整備場見学を終了し、バスで客室乗務員訓練センターへ移動。ここで再びスライドによる「客室乗務員ができるまで」を説明していただく。JAL本体で約8000人の客室乗務員が勤務していて、うち約1000人は外国人乗務員ということだ。10%超とは意外に多い。
現在は、入社から3年は1年更新の契約社員、4年目から正社員となる雇用形態で、保安要員という安全面と乗客に快適なフライトを提供するサービスの両面で非常に厳しい訓練を受け、まず国内線、そして国際線というプロセスを経て一人前の客室乗務員へと巣立っていくのだそうだ。なお、安全の確保の観点から、一人のCAが乗務する機種は3~4機種に限定されている。現在、JAL客室乗務員の目標キーワードは「きさくで美人」、Human Elements、Technical Elementsの両面で計15項目の評価基準からサービスのクオリティを向上させる努力をしているとのこと。説明では、各CAによるサービスのバラツキを是正することに注力しているとのことだったが、個人的な印象としては各CAの個性を強く感じるのはANAさんでJALさんは比較的同じような雰囲気の方が多いように感じる。
説明を伺って、ちょっと一般ユーザー視点で違和感を感じるのが「客室乗務員ができるまで」というタイトルだったり、「品質管理」という言葉を使うところ。(ANAさんにも品質管理部というセクションがあったので航空業界の特質かもしれないが…)ユーザーにとってはサービスの要であり、会社の評価に大きくつながる客室乗務員を「モノ」のように会社が見ているのかな?と感じるところがあった。会社=経営サイドに顧客目線が欠けているのか…
スライドを見終わって、訓練センターの見学。学校のような教室があるのは当たり前として、エアラインらしいのがメイクアップルーム。ここでは夜間のキャビンの明るさを再現してその光量に相応しいメイクを学んだりもする。また、立ち姿、座っている姿勢も確認できるようにミラーの位置も工夫されていた。
なお、研修中は45分の授業が1~8限までびっしり詰まっていて、テストも頻繁にあって本当に大変な2カ月らしい。7・8限には、お酒の作り方の授業があって、そこでは作ったカクテルなどをお互いに飲んでみたりすることもあり、普段気を張り続けている研修中にお酒を飲んで、皆さん予想以上に酔いが回ってしまうなんて裏話も教えてもらった。
脱線だが…ボクは、このお酒の置いてある教室でなかなか手に入らない会津の銘酒「飛露喜」があることを見逃さなかった(笑)。
さて、お酒といえば、気圧の低い機内では平地の3倍くらい酔いやすいらしい。3倍早くつぶれる「赤い酔生」にならないよう要注意!
(私も経験アリですが…)国際線で、眠りやすいようにとお酒を飲んで貧血で倒れる人も多いそうで、CA同士であの人はだいぶ飲んでいるので、これ以上は勧めないようにといった情報共有もしているんだそうだ。
その後、ひとつ上のフロアに移って、モックアップ(機材のレプリカ)がある訓練施設を見学、ファースト、ビジネス、エコノミーそれぞれのクラス、さらにギャレーのモックアップがある。その向いには歴代CAのユニフォームコレクションが展示されている。
ファーストクラスの座り心地を体験してからギャレーに移って最新のスチームレンジを使用した温め方法の説明を聞いたり、ジャンプシート体験を楽しむ。
それから、ビジネスクラスモックアップに移って、実際のNRTーJFK線を模したフライトシミュレーション。ビジネスクラスで行われているパーソナルサービスの片鱗を見せていただき大満足。かつて何度かビジネスクラスに(偶発的な無銭搭乗を含み)乗ったが、いずれも外国エアラインだったので、シートの広さと食器が金属という点以外はあまり感激はしなかった。やはり奮発してビジネスに乗るならJALにしようと心に決めた。
ここでは、なんと実際にビジネスクラスでこの春から提供する「〈ジョセフ・ペリエ〉キュヴェ・ジョセフィーヌ」をいただいた。美味しいシャンパーニュを美しいCAさんに注いでいただくだけで、平地の気圧でも3倍早く酔いそうになる(笑)。
最後が、エコノミークラスのモックアップに移っての緊急着水シミュレーション。このパートは今までの笑顔あふれる雰囲気とは一転しての真剣勝負。CAさんが声を張り上げて真剣に指示を出すので、見学気分だった我々も本番モードになっていく。救命胴衣も実際着けたことがなかったので、意外とあたふたしてしまう。実際、エンジンが止まったので7分後に着水しますなんて言われた日にはこの程度のパニックじゃすまないんだろうなぁ。今までで一番真面目に取り組んだ緊急訓練かもしれない(反省)。保安要員としてのCAさんの意識の高さに改めて感服。また、同時にコクピットでは着水のタイミングなどギリギリの時間管理をしているという話を聞いて、昨年の「ハドソン川の奇跡」を思い出した。
プログラムはこれで終了。出口ではアメニティと(バレンタインの)チョコレートのおみやげをいただいた。そして、バスに乗って第一ターミナルで解散…なのだが、バスの外では寒空の中、今日対応して下さったJALスタッフの皆様が一列に並んで手を振ってのお見送り。一番初めのセクションで聞いた「シップを見送って手を振る瞬間が整備士として一番達成感を感じる瞬間」という言葉を思い出した。(たまたまバスが信号待ちか何かのせいで、すぐ出なかったのだが)バスが見えなくなるまでずーっと感謝の思いを込めて手を振ってくれる姿を見て、ちょっと熱いものがこみ上げてきそうになった。「熱」が伝わるっていう感覚を久々に覚えた瞬間だった。
JALの再生にかける思いは本物だ。少なくとも、今日(わずか30人を対象とした無料のイベントにも関わらず10名以上で対応して下さった)現場の方々の「目の前の顧客に満足してもらえるために全力でサービスする」”本気”は参加者全員に伝わったはずだ。
帰宅して…いただいたチョコレートの包みには手書きの感謝のメッセージが同封されていた。会社の体質云々についてはいろいろ意見もあるだろうが、今の現場には「顧客の安全と快適なフライト」を提供するために一生懸命頑張っている方々がいることを忘れずに、微力ながらJALの再生を応援していきたい。Fly high again with passion!
というわけで、早速、5月の連休の予定を勝手に決めて、4/29発5/6帰りのJALのバンコク往復フライトを予約しました(笑)。
コメント
2007年5月の修学旅行@札幌の高等養護でANAの整備工場を見学させていただきました。
そのときは、概略説明と整備ヤードの見学で終わりました。
そのことを思い出すと、きむかつさんが体験されてきた内容の充実ぶりに驚きます。
いちばん感じ入るのは、きむかつさんもお書きなっている本気度、気合いの入り具合のすごさですね。そうした一生懸命さは応援したいなと私も思いました。
で、そうですかぁ、バンコクに。ええなぁ。
拙い文章ながら一生懸命さが伝わったらうれしいです。
そういえば、今月、上京されるんでしたっけ?時間があったらお目にかかりましょう。
[…] て、往路は成田に行くのが面倒なので羽田発関空経由便にした(JAL利用なのだ…その理由はコチラ)。さすがに大型連休初日だけあって羽田発の便はどこも満席。関空行の便では以前仕事 […]