シチリアの宿はとても快適だ。本日はきれいな港町とStefanoにも勧められたトラーパニへいくことに決定。部屋のテラスからは山の間からのぼる朝日が見えて、気持ちのいい晴天。細い道のお向かいのテラスからも住人が何をするでもなく通りを見下ろしている。そして朝はお母さんたちがテラス越しに会話を交わすというのが定番らしい(笑)。ベランダはおばさん・おばあちゃんの社交場なのだ。
朝食のビュッフェは、パンもケーキもフルーツもウマイが、何と言っても生搾りのオレンジジュースが最高。(宿の?)おじさんが話しかけてきて、片言単語だけど仕事は何かとかなんとなく通じる。ここではちゃんと日本人(Japopese)?と聞かれることがほとんどなのでローマあたりと違って観光客としてのアジア人は日本人以外まだあまりいないのだろう。おじさんはなぜか「山本五十六」という名前が「56」と書くというのを知っていた(笑)。お医者さんだそうで、連れが妊娠23週だと言ったら、ウルトラスクリーニングはもうしたかというようなことを聞かれて何のことか最初わからなかったものの、色々並べた単語にダウーノというのも入っていたので、どうやら羊水検査など出生前検査のことらしい?(後で調べたら、やっぱり超音波検査だったみたい。ダウン症などがわかるものらしい)。最後におじさんが「アウグーリ」(おめでとう)と言ってくれ、朝の会話終了(笑)。
駅の近くのバス停でトラーパニ行きのバススケジュールを聞こうと思ったら、まさに9時の便が出発してしまった。次は10時発。便があれば予定変更してアグリジェント行に乗ろうかと思ったけどこちらも便がないので10時まで駅近くのヴァッラロ市場を見に行くことにする。路地に広がる市場は魚あり野菜あり肉ありで、売り子のお兄さんたちの独特のダミ声が両側からすごい音量で飛び交う。まさにシチリアのアメ横(笑)。魚屋ではどこの店でもメカジキがどーんと鼻先を突き上げて置いてある。そして、体はどんどん輪切りにされて並べられていく。日本で一般的な赤身のマグロはないようだ。せっかく醤油と箸を持ってきたのに…魚屋には他に、あさりやタコ、イカはもちろん、牡蠣やムール貝、ロブスターや塩漬けの切り身、カラスミなど日本人にも馴染みの海の幸がいっぱいある。果物も野菜も安く、オレンジやミカンは1キロ1ユーロ以下。長くいるぜひキッチン付のコンドミニアムで調理したい。オリーブ、雑貨やチーズなどもバラエティがあって楽しい。パニーノにあげたての具や焼肉を挟んで食べることもできる。
ひとしきり市場を見てバス停に戻り、チケットを買って一路トラーパニへ。ガイドブックには書いてなかったが、イタリアのプルマン(長距離バス)は往復割引が設定されていることが多い。パレルモ-トラーパニはSegesta社が運行、片道8.6ユーロだが往復だと13.1ユーロとけっこうお得。
トラーパニへは所要2時間、途中までは空港と同じルートだ。ティレニア海を右手に、岩山と丘を左手に見て進む道がまた飽きない。オリーブやオレンジ、それに今は枝を落としてあるけれどブドウ棚が広がる丘の畑は、絵に描いたような田園風景。丘の上には海風を受けてまわる風力発電も並んでいてまた新たな景観をつくっている。トラーパニの終着は港沿いにあるバスの営業所。下車すると日差しがパレルモよりさらに強く感じられる。海が陽射しをうけてキラキラ輝いてまぶしい。たぶん気温は20度前後で上着はいらないくらい。小さいエリアながら散策にはぴったりの小ぎれいな町だ。
メインストリートらしい通りは家族連れやグループで賑わっている。旅行者はイタリア国内の人がほとんどであまり外国人らしい一行は見かけない。魚市場と書いてあった場所までてくてく行ったところ、そこは「魚市場広場」で、実際の市場はなかった、が、ここから海沿いに散策できる舗道があって大変綺麗。突端にあるリニーの塔までのんびり散歩。海の水は澄んでいて底までが透けて見える。屋根の影が海に映っているのが面白い。
舗道沿いに建ち並ぶ家からはお昼ご飯のいい匂い。明らかに焼魚の匂いや、なんか煮込みのような匂いが漂ってきてのどかな雰囲気。食欲が刺激されるが、今日はエピファニーの祝日のため開いている食堂が見当たらない。
街を歩いていると何度か面白い光景に出くわした。4~5階建てのマンションのベランダに滑車がついていてそれで買物かごを外から引き上げるのだ。今ならケータイがあるので、お母さんが家にいる家族に、「家の前に着いたからフックを降ろして」なんて電話をするのだろう。なんでこういうのが発展するのかというと、やたら階段の傾斜がきついのだ。年寄りは住めないだろうなぁ。
着いたときはかろうじて開いてたお店も午後になって閉まってしまったようだ。結局、港に戻る道すがらパスタ、パニーニなど軽食の食べられるスタンドのような店が開いているのを見つけ、ここで遅めのランチ。店はマンマをジャージ姿の息子さんが手伝っている。トラーパニでは、北アフリカのクスクスを期待していたものの、残念ながら昼はやってないとのこと。結局、アリモノでトマトと牛肉の煮込みのパスタとトマトとチーズとオリーブのサンドイッチを食べるがけっこう美味かった。さすが、イタリア食べ物に関してハズレはない。そしてボリュームも満点。
食後もしばらく歩くが、自然と元来たエリアに戻ってしまった上、午後はほぼ全ての店が閉まって閑散としているので、ちょっと予定より早いが3時のバスでパレルモへ戻る。トラパーニは空気も海もきれいな町だった。パレルモからの日帰りでぜひ来てほしいところ。
パレルモには5時に到着。まだ明るいので、朝訪れた市場がどうなったか見に行く。しかし、見事にどこも店仕舞いしていて、もう廃棄されたらしい小魚なんかはそのまま放置されてる。シチリアの野良犬がどれも丸々太っているのはこういう飯に事欠かないからだろう…
旧市街にはモザイクの綺麗なドームや古い鐘楼のある教会がいくつかあるが、残念ながらどこも閉まっている。パレルモでもトラーパニでも、普通のアパートの壁や路地などに、聖人の像や絵をかかげた、日本でいう地蔵さんみたいなニッチがあって、造花と電飾がついているのが面白い。通りによって守護聖人が決まっているのかもしれないし、アパートのオーナーか住人たちかが、誰を祀るかを決めているのかもしれないが、ローマでは見られなかった風景だ。
宿へ続く通りを歩いていると、ぐうぐう寝ていた大きな犬がむっくり起きて、何を思ったのかずっと一緒についてくる。かと思えば追い越してみてはこちらが遅れれば待っているし、道をわたってもついてくる。ういヤツじゃ。結局、その犬(勝手にビトーと名付ける)は宿までついてきて、バイバイと言ったらふいっと自分の好きなところに行ってしまった。ビトーが旅行者の夜道を守ってくれたのか、美味しいものをもらえると密かに期待していたのかは不明。
休日のためカルフールも閉まっていたので、夕飯は、直近のピッツェリアのショーケースに並んでいたピザをテイクアウト。そして、連れがずーっと食べたいと言っていた念願のシチリア名物カンノーロを買って帰る。シチリア島を舞台にした小説にも出てくる菓子で、分厚いトルティーヤをカリッと揚げたようなこんがりしたクッキー生地をロール状に巻いて、中にクリームをたっぷり入れてある。リコッタチーズのクリームだそうだ。
本日の1曲 Van Halen「When It’s Love」
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