【読書メモ】人を動かす文章術(齋藤 孝 著 講談社文庫)

文章術の本は山ほどあるが、この1冊ほどビジネスマンや学生にとって役に立つものはないかもしれない。というのも、この本は洗練された文章を書くための指南書ではなく、タイトルのとおり「人を動かす」という明確なアウトプットに向けた文章の書き方を教えてくれるからだ。本書では、エッセイからビジネス文書、メールの書き方まで様々な例をあげているが、ブログを書く際も非常に役立つ。

著者は、第一章で「エッセイから書くことを始めよう」と勧め、その理由として、書くことを意識しながら生活するようになる、つまり常に何か新しい発見を求めて生きるようになるからと述べている。これだけでも、「書く」ことの意義が明確になり、何か書いてみようという気になる。

本書を読んで、最もインパクトのあるフレーズが冒頭から出てくる。齋藤氏の本はいつもアタマにエッセンスが凝縮されているからうれしい。もっとも、冒頭で惹かれないとそこで読むのを止めてしまうこともあるが…

ものの見方を変える文章こそが意味のある文章だ

これを最終目標として文章を書く。非常にハードルが高いがこの姿勢が文章を書く人間には必要なのだ。

以下、ほぼ章立てに沿って大事なポイントを抜書きしていく。

文章を書く訓練
「書く」力は「新しい認識を得る力」と「文脈をつなげる力」の2つ。

まず、後者を訓練する。
他者の文章をつなぐ。作家よりも編集者に求められる能力のように思うが、人の話を聞いて不要な部分を削ぎ落とし、文章の順序を入れ替えていく。これによって知識が定着する効果、人に伝えると人脈づくりにも役立つ効果もある。

「段取り力」を養う
1. ネタ出し 誰かと話すことが有効
2. キーワードを見つける
3. 順番を決める→文章の構造を固める
4. 最後の文章(ゴール)を決める: 最重要 ここに持っていくようにつなげていく
  凡庸な結論には絶対しない イメージで一見無関係なものを持ってくる
5. タイトル(スタート)を決める: 読者を惹きつける
6. 通過地点を3つ定める: キーワードから持ってくる

「通る」論文の書き方
審査員は「落とす」ために読んでいることを認識する
→凡庸なものは真っ先に不合格
論文は、報告書と企画書が一緒になったもの。要旨で試みと狙い、そして結果をクリアに書く。プラス再現性のある内容とする。
無理や歪みが個性になり、面白い文章になる。強引につなげることも必要。

ビジネス文書の書き方
形式を押さえれば書けるモノ。しかし、人を動かす力を持たせなければ中身がない。通らない企画書、利益を産まない報告書に終わる。目的は「利益を産む」ことにあることを忘れない。

読書感想文は生意気なくらい自分の視点を出す
惹かれる人物にスポットライトをあてる、好きな場面、セリフにコメントをつけていく。一冊の本で共感できるセリフを1つ拾えればいい、くらいの気持ちで本を読む。流し読みと集中する部分に濃淡をつけてスピードアップ。

小論文は常識的ではなく、「光る」ものを
ここでも敵は「凡庸さ」。いかに独自の視点を出すか。引用をするのもアリ。
普通のものは絶対書かない、くらいの気合が必要。フランス人の感覚に習え。
ディベート的な視点を持ち込む。YES or NOではない結論を作れないか。発見、新たな視点を盛り込むことで「光る」

読むときの視点
1. これとこれが違う、ということを言いたいんだな
2. これとこれは実は同じ、ということを言いたいんだな
3.これがどうスゴイのか、そのポイントを言ってるんだな

書くときに意識してみる

レベルの高い文章
一人弁証法: 正→反→合のステップ。反には別の視点を盛り込む
凡庸さは恥と知れ」→一般論を乗り越える。別の着眼点から光をあてる
引用と出典で「オトク感」が上がる

プロでなければ文章の上手い下手はどうでもいい、中身のある文章か?それを読んだ人を惹きつける内容・視点があるかどうかが齋藤氏の考える「人を動かす」力のある文章ということだ。そして、文章を書いている人の99%に必要な文章力とはその力なのだ。あぁ、凡庸なまとめになってしまった。

本日の1曲 Star Wars EpI The Phantom Menace「The Droid Invasion & The Appearance Of Darth Maul」

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