今年から著者の小宮先生のセミナーに何度か出席し、色々刺激を受けています。お話を聞いていていつも驚かされるのが、その多忙ぶりと記憶力なので、小宮先生の数多い著書の中から「時間力」を選び、読んでみました。
いい意味で期待を裏切られたのが、本書の肝になるコンセプトが「効率よく時間を使う技術」ではなく、「成果を上げられる時間を確保する」という点でした。多くの「時間術」の本で語られるのは、スキマ時間の活用といった話になりますが、成果を求められる仕事を生業にしている小宮先生のようなコンサルトや先生が普段お付き合いしている経営者にとっては、数%の効率化に大した意味はなく、限られた時間の中でアウトプットを最大限に上げることが求められるのでしょう。その本質的な解決策として、やる気のある時間を確保する=時間をコントロールするという方法が挙げられています。
精神的な自由度を高めた状態に訪れる最大限のアウトプットができる時間を「スターの時間」と紹介されていますが、チクセントミハイの言う「Flow」状態と同じゾーンなのかと思います。本書が出版されたのが2009年で、Flowは2008年のようなので、出版当時はまだFlowという言葉が一般的ではなかったのでしょう。
「時間力」というタイトルですが、時間だけではなく、講演や執筆といったアウトプットの効率を上げるためのテクニックにも触れられています。個人的には、講演のポイントはこれからの自分に役立つ部分で、とても勉強になりました。ちなみに小宮先生は『「面白いお話をありがとうございました」は(お笑いをしているんじゃないんあだから)失礼でしょう、「役に立ちました」と言ってくださいよ』と講演の際に笑いを取りながらおっしゃっていました。
小手先の時間捻出ではなく、自分の時間をコントロールして生産性を飛躍的に高めたい方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
以下、覚えておきたいポイントの抜き書きです。
- やる気の出る時間をどれだけ確保するか
- 自分の時間を把握し、やることを把握して時間をコントロールできる
- もっともパフォーマンスのよい時間帯を把握し、それを最大限に活用できるようセッティングする(邪魔されない工夫、すぐに取りかかれる段取り)
- 気持ちはプラスとマイナスしかない=ネガティブな感情とポジティブな感情は併存しない→切替が大事
- 「志は気の師」目的を持つことでエネルギーが出る。ブレイクダウンではなく、目標のステップアップから目的を見出す方法もある
- 読書の目的の1つは論理的思考力を高めること、それは論理的思考力の高い人が書いた難解な本を読み解くことで得られる
- 段取りとは、この後起こることを予見すること
- アウトプットのポイントはバリューとインパクト
- 講演のポイント 1.最初にいかに観客の関心を惹き、聞く姿勢にさせるか(IMPACT) 2.話の内容に価値を感じてもらうか(VALUE) 3.話を聞いて感動し、また聞いてもらえると思うか
- 自分の得意なこと以外は伝えない
- 意味ではなく意識が伝わる話をすると、繰り返し聞きに来てくれる
- 講演の際は最初の2分間だけ練習する
- 迷う時間をなくす
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