ハーバード大学で日本語教師を務め、その後スタンフォード大でMBAを修了し、エグゼクティブサーチ会社のコーン・フェリーでヘッドハンターとして活躍され、現在は多くの一流企業の社外取締役を務められている著者がグローバルビジネス界のリーダーに求められるコミュニケーションについてまとめた本です。
外国人が多数、英語が標準語という環境で日本人が上手くコミュニケーションをとっていくための経験則に加え、評価されるリーダーに共通する考え方など、ヘッドハンターとしてご自身が関わった多くのエグゼクティブを通じて学んだことが書かれており、ビジネスパーソンとして非常に参考になる本です。
特に、部下を伸ばし自分も成功する10のコミュニケーション術は管理職にとって覚えておきたいところだと思います。
世界のリーダーに学んだ 自分の考えの正しい伝え方 (PHPビジネス新書) | ||||
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以下、覚えておきたいポイントを抜書きします。
◆グローバル社会でのコミュニケーションで心得ておくべきこと:
心の国境を作らない。個々の個性と国民性を結びつ十把一絡げに決めつけるのは自ら心の国境を作ることである。
◆人をカテゴライズして見ない:
自分にバイアスがかかっていることを意識しておく。
◆「外柔内剛」:
内に絶対に譲れないの価値観を守っていきながら外に対しては相手の個性や価値観、国情などに柔軟に対応していく。言い換えれば、アイデンティティーと多様性の両方を持って相手と接する。
◆外国語に対する日本人の考え方:
日本は、流暢に外国語を話せれば必ず相手は理解してくれる、熱意さえあれば言葉は下手でも思いは通じるの両極端になりがち。大事なのは伝えたいメッセージをきちんと持ち、それを相手にどう伝えれば理解してもらえるかをTPOに応じて考える。
◆多人数との交渉:
多人数との交渉の場ではいちばん反対している人を見つけて説得する。「あなたが絶対反対を貫くなら他の人達を説得するのは諦める」はキラーフレーズ。
◆グローバルリーダーの資質、求められる能力
・個人的資質: 戦略的思考/論理的思考・分析力/頭脳明晰/説得力・傾聴力/人間中心/自立と自律/起業家精神/多様性に対する感性・関係構築力
・専門的資質: ビジネスセンス/起業家としての能力(実現力)/多様性対応能力(危機管理能力、コミュニケーション力、創造的柔軟な問題解決能力)情報技術対応能力
◆戦略的思考を養う:
状況の全体像を俯瞰し、その問題の全体の中での位置づけを見て様々な構成要素を整理し、問題のプライオリティを設定し判断を下す。どうやるかという戦術的な部分から入るのは愚。戦略的にあるべき姿と現状のギャップを見極め、現状の課題を洗い出しその上でどうやるかの議論に入る。
◆交渉力を高めるために:
相手の意見に対し、自分ならこう言うと考える癖をつける。ディベートも有効。
◆プレゼンの最も重要なポイント:
聴衆を知ること(Know Your Audience)。外国語のプレゼンでは原稿を読むのもアリ。デリバリー(話し方)も考える。
◆プレゼン準備段階でのプロセス
- 強調したい項目を書き出す
- 不要なものを捨てていく
- 話す順番を考えながら内容を詰めていく
- 原稿を客観的な視点で読み直す
- 実際に読んで時間を測る
- 自分の言葉でなければ伝わらない
◆優秀なエグゼクティブに共通する話し方
- 伝えたいメッセージを明確に持つ
- 相手やTPOに合わせて変える
- 話の途中で言葉の定義を確認する
- 伝えたいことはなんどでも繰り返す
- 傾聴力で相手のタイプを把握して話す
◆人間中心で部下を育てる人は上に行く:
部下を伸ばし自分も成功する10のコミュニケーション術
- 相手と自分は違うと認め受け入れる習慣→価値観を押しつけない
- 自分が部下だった時のケースは参考になる
- 依頼する時は起源と優先順位をはっきり伝える
- 依頼した仕事は途中で自分から経過を確認する
- 質問されてもすぐには答えず、考えるチャンスを与える
- 「わかりました」のあと、必ずお互いの理解を確認する
- 良い部分を具体的にほめると部下のやる気に火がつく
- 数字と頑張りの両面を評価する
- 自己評価が高い部下へのアドバイスの仕方 何をしたら評価されるのかを具体的に伝える
- 上司は積極的に部下のスポンサーとなるべき
◆上司に相談するのはまず自分で解決策を考えてから:
→これは、20代の頃、同じ仕事を担当する先輩と一緒に上司に相談に行く際、彼に言われた「管理職のところに相談に行くのにノーアイデアって訳にはいかないだろ」というひと言を思い出しました。このひと言はずっと頭に残っています。
◆どんな業務も作業ではなく仕事と捉える:
言われたことだけをする(作業)のか、自分の創意工夫で付加価値をつけられるか(仕事)。
◆グローバス/ビジネスに必須の創造的柔軟な問題解決能力:
以下のプロセスを繰り返すことで身につける。
- 最悪のシナリオから最善のシナリオまでいくつかのシナリオを考える
- 各シナリオを検討し可能な解決策の選択肢を洗い出す
- それぞれの選択肢を実施した際のプロコンを検討する。その際、選択肢をチームで持ち寄ってブレストすれば自分で考えつかなかった選択肢を知ることができる
- その時点で最善と思われる選択肢を実施する
- 結果を検証する
世界のリーダーに学んだ 自分の考えの正しい伝え方 (PHPビジネス新書) | ||||
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