【読書メモ】マーケット感覚を身につけよう(ちきりん著 ダイヤモンド社)

ちきりんさんの著作はだいたい読んでいますが、だいたい「なるほど!」と思う部分6~7割に、「当たり前じゃん」と思う部分が残り3~4割という感覚を持ちます。きっと「なるほど!」と思う部分が少なくなるにつれ、ちきりん的な視野を持てるようになり、発想も豊かになるのでしょう。本書でも、「なるほど!」感の方が強いので、まだまだ自分の視野が狭いのだなぁと思います。

 

さて、本書のメインテーマは”マーケット感覚”なのですが、自分の動きとして捉えると、常に「価値が何かを考え、見極める」ことと言えます。次から次へと新しいビジネスを立ち上げる方がいますが、きっとこの感覚が身につけば、同じモノを見ても、普通の人とは違う見え方ができ、何らかの価値を見つけ出し市場を作り出せるようになるのでしょう。一例として挙げられているのが、「不満買取センター」です。非伝統的な価値が市場取引されるようになり生まれたビジネスの典型的な例ですね。

マーケット感覚が、既に存在しているモノの中に新たな価値を見いだし、市場を創造することであるということがよく分かりました。著者は、その感覚を磨くために、プライシング(値付け)やインセンティブシステムの理解などを勧めています。

本書でいちばん印象的だったのが、寄付(指摘援助市場におけるマーケティング)は圧倒的に自己責任が問いにくく、素直に喜ぶ子どもに集まる、だから、WFPは「途上国では給食が出るから子どもたちが学校にやって来る」という「教育」をキーワードにしたPRをして食費を集めているという箇所です。マーケット感覚とマーケティングの関係がよく分かる例です。

覚えておきたいポイント

・ 論理思考とマーケット感覚 2つのアプローチで考える。マーケット感覚: 顧客が市場で価値を取引する場面を直感的に思い浮かべられる能力

・ 「価値」は、製品やサービスとイコールではなく、買い手が製品やサービスに対して求めているモノ →クリステンセンの「片付けるべき用事(Jobs to be done)」に近い?
ex. 飛行機に期待する価値 1.目的地へ行って誰かと話す 2.目的地を見る 3.目的地へ何かを運ぶ 4.目的地から何かを持って帰る など複数の価値があり、それぞれコンペティターは違うものになる

・ 社会の市場化 インターネットの普及が後押し ex. 就活や婚活 ローカルマーケットだったものが再構築され 日本や世界という単位での序列に変わる マーケット感覚があれば、弱者でもチャンスが得られるのが市場≠市場は弱者に厳しい

・ 市場化により価格が需給バランスによって決定されるようになる ex.「士業」の需要 弁護士と医師・薬剤師

・ 市場のレイヤー 何を買わせるか?の上位に「消費市場」vs「貯蓄市場」の争いがある

・ マーケット感覚とマーケティング: 前者は「社会や人が動く根源的な仕組みを理解すること」、後者は「その仕組みを活かして何らかの目的を達成するための手法」

・ 日本人は「定価」に慣れ親しんだ結果、プライシング能力が大きく欠如している→自分自身で価値を理解する習慣をつける

・ 不満、欲望を抑えると新たな価値、サービスが生まれない→マーケット感覚が育たない

・ 作りこむより、とりあえずやってみて市場に出すことが大事 市場の反応を見て製品やサービスを改良していけばいい →リーン・スタートアップ

・ 失敗と成功は表裏ではなく、時系列で連続的な関係だと理解し、失敗は不可欠なものと考える

・ 変わらなければ替えられる 守られているものほど危ない 規制や資格で守られている分野こそ新しい技術や市場化に狙われる

まとめ

マーケット感覚を磨くことが「価値創造」につながり、社会が豊かになるという主張に共感しました。マーケット感覚はもちろんビジネスマンである自分に必須のモノですが、終章の「現代において親が子に伝えるべきことは、変化は恐れるべきものではなく、楽しむべきものだという感覚」という箇所もインパクトがありました。

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