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【読書メモ】小説の読み方の教科書(岩崎夏海著 潮出版社)

「もしドラ」の作者が書いた小説読本だが、いわゆる読書術という感じではない。著者の読書遍歴から始まり、小説の歴史についての話で半分弱ページを使ってしまうw。後半で「ハックルベリー・フィンの冒険」を例にして具体的に「小説の正しい読み方」を説いている。
小説をどう読もうが読者の勝手なのだろうが、正しく読めないと楽しめないし、本来その小説を読むことで得られるものが見えないのはもったいない。茶道と同じく面白く読むためには決まったやり方、基本や原則があるというのが著者の考えだ。

僕自身は、あまり小説を読むほうではなく(「もしドラ」も読んでない…というかあの本が小説というジャンルだと思ってなかったw)、読み始めるとその世界に没頭するのだが、読み終わるとすぐ次の小説が読みたくなるというほどでもない。全く「小説の味わい方」など考えたこともなかったので、この本に出会えたのはとてもよかったと思う。本を読むのはそれなりに時間がかかるので、小説の歴史・体系や、いい小説というものを目利きに教えてもらえるというのはありがたい。

さて、著者が説く正しい小説の読み方は、本書のテキストであるハックルベリー・フィンの冒険のまえがきでマーク・トウェインが書いている

「この物語に主題を見この物語に主題を見出さんとする者は告訴さるべし。そこに教訓を見出さんとする者は追放さるべし。そこに筋書を見出さんとする者は射殺さるべし。」

という警告に凝縮されている(これを使いたかったから「ハック」をテキストにしたんじゃないかと思う)。

・やってはいけないこと

ストーリーの結末を予想しながら読んでいけない
これによって読書が結末を予想するためのヒント探しになってしまし、大切なものを見落としてしまう。そして、結末の意外性をもって小説の良悪を判断するようになってしまう。
自分も確かにそういうところあるな。ミステリー読むとどうしてもそうなりがち。実際、今売れている推理作家は読者の期待を裏切らない結末をいつも用意できる人たちだと思う。しかし、これはダメな読み方だったのだ。

・小説でしか味わえない何かとは

「言葉では説明できない何か」つまり「行間」のこと。行間を意識しながら読むのが正しい。「ハック」において、それは「美しさ」だと著者は言う。
そして、行間を味わうためには「再読」すべし。繰り返し読むことによってキャラクターが立体的になり、物語全体が俯瞰的に見え、モチーフの濃淡に気づくようになる。また、細部のディテールも見えるようになる。

・書かれたことを素直に受け取る

二面性のあるキャラクターの片方だけを受け入れ、他方を拒絶するようでは人間としての成長もはかれない…この後に著者は読書の目的として「何かを得る」と定義していて読者はまず「何かを受け取る立場にある」べしと主張している。だから、戸惑いや違和感を乗り越えてキャラクターの行動を認め受け入れることが大事ということになる。このあたり、すべての小説に当てはまるのか疑問だが、謙虚に読むことにしましょう。
なお、読書によって読者が得られる「何か」とは「新しいものの見方」であり、それが得られるから読書によって一回り大きな人間になれるとまで言っている。

・簡単に理解しようとしない

理解できないまま受け入れ、そこに生まれる「問い」に対して読者が答えをえぐり出すことが正しい読み方である。

なお、本書で著者が出会った名著として挙げられているのは、
虚航船団(筒井康隆)
東一局五十二本場(阿佐田哲也)
百年の孤独(ガルシア・マルケス)
ハックルベリ・フィンの冒険(マーク・トウェイン)
そして、すべての小説の源流であり最高峰とまで著者が言うドン・キホーテ(セルバンテス)
など。来年はこれらの小説をまずは読んでみたい。

本日の1曲 SPEED「White Love」

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